ワイヤーソーとは、細い金属ワイヤーを高速で走らせてインゴットを薄くスライスし、ウェハの原型を切り出す装置です。直径0.1mm前後のワイヤーを2本のガイドローラーに数百〜千本分巻き付けて「ワイヤー列」を作り、そこにインゴットを押し当てることで、数百枚のウェハを一度に切り出します。
方式は2種類あります。従来の遊離砥粒方式は、砥粒(炭化ケイ素など)を分散させたスラリーをワイヤーに供給し、砥粒が転がりながら削るラッピング的な機構で切断します。現在主流の固定砥粒方式(ダイヤモンドワイヤー)は、ワイヤー表面にダイヤ砥粒を電着・樹脂固着したもので、切削速度が速く、スラリー処理が不要で、切り代(カーフ)も細くできます。
スライス工程が支配する品質は、ウェハの厚みばらつき(TTV)、うねり(Warp)、ソーマーク(切断痕)、そして加工変質層の深さです。切断中のワイヤーのたわみや振動はそのまま面の凹凸として残り、後工程のラッピング・研磨で除去しなければならない取り代の量を決めます。つまりスライスの精度が高いほど、後工程の負担と材料ロスが減ります。
経済性の観点では、切り代(カーフロス)の削減が最重要テーマです。切断によって粉になって失われるシリコンは、ウェハ1枚分の厚みに匹敵するほどの量になります。ダイヤモンドワイヤーの細線化が進められているのはこのためで、ワイヤー径を細くするほど1本のインゴットから取れる枚数が増えます。
SiCのようにダイヤモンドに次ぐ硬度を持つ材料では、ワイヤーソーの切断時間と材料ロスが特に大きな負担となります。そのため、レーザーで内部に改質層を作って剥ぎ取るレーザースライシングへの置き換えが進みつつあります。装置メーカーとしては、DISCO・東京精密・Meyer Burgerなどが知られています。