積層欠陥(スタッキングフォルト)とは

Stacking Fault

最終更新:2026-09-14単結晶製造装置(CZ/FZ引上げ)材料

積層欠陥(スタッキングフォルト)とは?

積層欠陥(スタッキングフォルト)とは、原子面の積み重なりの順序がある面を境に乱れた面状の欠陥で、シリコンでは{111}面の ABCABC… という順序の一部が抜けたり挟まったりしたものです。熱酸化で注入された格子間シリコンが集まってできる酸化誘起積層欠陥(OSF)が代表例です。SiCでは通電中に積層欠陥が広がってオン電圧が上がるバイポーラ劣化が大きな課題です。

定義・解説

積層欠陥(スタッキングフォルト)とは、結晶を構成する原子面の積み重なりの順序が、ある面を境に乱れている面状の欠陥です。シリコンのダイヤモンド構造では{111}面が ABCABC… という順序で積み重なっていますが、途中で1層抜けて ABCACABC… となったものを内因性(イントリンシック)積層欠陥、1層余分に挟まって ABCABACABC… となったものを外因性(エクストリンシック)積層欠陥と呼びます。

積層欠陥は結晶の途中で終わるため、その縁は部分転位で囲まれています。完全な格子1つ分ではない部分的なずれによって面の内側だけ積層順序が変わり、その境界が線状の部分転位になるという構造です。格子間原子が集まってできた積層欠陥は、フランク部分転位に囲まれた円盤状のループになります。

シリコンで代表的なのが、酸化誘起積層欠陥(OSF)です。熱酸化でシリコンが酸化膜に変わるとき、酸化膜に取り込まれなかった格子間シリコンが結晶側へ注入され、表面近くの微小な欠陥や金属汚染を核として集まり、外因性の積層欠陥に成長します。CZ結晶では成長条件によってウェハ上にリング状にOSFが現れることがあり(OSFリング)、結晶育成時に空孔が優勢だった領域と格子間シリコンが優勢だった領域の境界の目印になります。

積層欠陥がpn接合や素子の活性領域にかかると、その縁の部分転位や、そこに集まった金属不純物がリーク電流の原因になります。メモリの電荷保持やイメージセンサーの暗電流にも影響するため、デバイスが作られる表層の無欠陥化が求められます。

SiCでは、積層欠陥が特に重要な信頼性の課題です。SiCは原子面の積み重ね方の違いで4H・6Hなど多くの結晶多形を持ち、積層欠陥ができるエネルギーが小さい材料です。ベーサル面転位(BPD)を起点に、通電時の再結合エネルギーによって積層欠陥が三角形や帯状に広がると、その領域が電流を妨げてオン電圧が上昇するバイポーラ劣化を引き起こします。

図解

刃状転位の断面模式図と、{111}面の積層順序で見た正常・内因性積層欠陥・双晶の比較図。
刃状転位は余分な原子面の端、積層欠陥と双晶は{111}面の積み重なり方の乱れとして理解できる

積層順序で見る:正常・積層欠陥・双晶

状態{111} 面の積層順序境界の構造
正常ABCABCABCなし
内因性積層欠陥ABCA|CABC(B が1層抜ける)縁が部分転位で囲まれる
外因性積層欠陥ABCAB|A|CABC(A が1層挟まる)縁が部分転位で囲まれる(格子間原子の集合ならフランク部分転位)
双晶境界ABCABC|BACBA(境界から逆順)鏡映面。部分転位はない

ダイヤモンド構造では、積層欠陥の部分だけが局所的に六方晶と同じ積み重なり方になっています。 このずれに必要なエネルギー(積層欠陥エネルギー)が小さい材料ほど積層欠陥ができやすく、 シリコンに比べて SiC や一部の化合物半導体で積層欠陥や双晶が問題になりやすいのはこのためです。

OSF:酸化が格子間シリコンを押し込む

熱酸化では、シリコンが酸素と反応して SiO₂ に変わり、酸化膜1 nm あたり約0.44 nm のシリコンが消費されます。 SiO₂ はもとのシリコンより体積が大きいため、界面では一部のシリコン原子が酸化膜に取り込まれずに押し出され、 格子間シリコンとして結晶側へ注入されます。

注入された格子間シリコンは、表面近くにある微小な欠陥や金属汚染を核として集まり、外因性の積層欠陥として成長します。 酸化の時間が長いほど OSF は大きくなり、逆に酸化しない高温の雰囲気では縮んで消えていきます。

OSF を使った評価

OSF は核がないとできないため、核の量、つまり結晶の微小欠陥や工程の汚染の指標になります。 ウェハを1,100℃前後で1時間程度ウェット酸化し、酸化膜を除去してから選択エッチングで浮かび上がらせ、 表面のピットを数える方法が使われます。CZ 結晶ではこの OSF がリング状に現れることがあり、 その位置がGrown-in欠陥の種類の境界を示します。

SiC のバイポーラ劣化

SiC の MOSFET の内蔵ダイオードや PiN ダイオードに順方向の電流を流すと、 電子と正孔の再結合で放出されるエネルギーによって、ベーサル面転位(BPD)の部分転位が動き出します。 その後ろに積層欠陥が三角形や帯状に広がり、積層欠陥の領域はキャリアの流れを妨げるため、 オン電圧が時間とともに上がっていきます。これがバイポーラ劣化です。

対策考え方
BPD から TED への変換エピ成長の初期に、基板の BPD を無害な貫通刃状転位(TED)へ変えてエピ層へ持ち込まない
再結合を促すバッファ層基板との間に高濃度の層を入れ、正孔が基板の BPD に届く前に再結合させる
スクリーニング通電試験で劣化するチップを出荷前に除く

基板の品質についてはSiCウェハ、転位の基本は転位の解説を参照してください。

あわせて読みたい

Grown-in欠陥(OSFリング)とは →双晶とは →SiCウェハとは →

よくある質問(FAQ)

OSF(酸化誘起積層欠陥)とは何ですか?
シリコンを熱酸化したときに生じる積層欠陥です。酸化の際に酸化膜に取り込まれなかった格子間シリコンが結晶側へ注入され、表面近くの微小な欠陥や金属汚染を核として集まり、面状に成長します。結晶の品質や工程の汚染を評価する指標としても使われ、酸化後に選択エッチングで浮かび上がらせて数えます。
OSFリングとは何ですか?
CZシリコンのウェハを酸化すると、積層欠陥がリング状に集中して現れる領域のことです。結晶育成時に空孔が優勢だった内側と、格子間シリコンが優勢だった外側の境界付近に現れ、リングの位置から結晶の成長条件(引き上げ速度と温度勾配の比)を読み取れます。
SiCのバイポーラ劣化とは何ですか?
SiCデバイスに順方向の電流を流し続けると、オン電圧が徐々に上がっていく現象です。基板やエピ層に含まれるベーサル面転位を起点に、電子と正孔の再結合で放出されるエネルギーによって積層欠陥が広がり、その領域が電流を妨げるために起こります。エピ成長の初期に転位を無害な種類へ変換する技術などで対策されています。

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