積層欠陥(スタッキングフォルト)とは、結晶を構成する原子面の積み重なりの順序が、ある面を境に乱れている面状の欠陥です。シリコンのダイヤモンド構造では{111}面が ABCABC… という順序で積み重なっていますが、途中で1層抜けて ABCACABC… となったものを内因性(イントリンシック)積層欠陥、1層余分に挟まって ABCABACABC… となったものを外因性(エクストリンシック)積層欠陥と呼びます。
積層欠陥は結晶の途中で終わるため、その縁は部分転位で囲まれています。完全な格子1つ分ではない部分的なずれによって面の内側だけ積層順序が変わり、その境界が線状の部分転位になるという構造です。格子間原子が集まってできた積層欠陥は、フランク部分転位に囲まれた円盤状のループになります。
シリコンで代表的なのが、酸化誘起積層欠陥(OSF)です。熱酸化でシリコンが酸化膜に変わるとき、酸化膜に取り込まれなかった格子間シリコンが結晶側へ注入され、表面近くの微小な欠陥や金属汚染を核として集まり、外因性の積層欠陥に成長します。CZ結晶では成長条件によってウェハ上にリング状にOSFが現れることがあり(OSFリング)、結晶育成時に空孔が優勢だった領域と格子間シリコンが優勢だった領域の境界の目印になります。
積層欠陥がpn接合や素子の活性領域にかかると、その縁の部分転位や、そこに集まった金属不純物がリーク電流の原因になります。メモリの電荷保持やイメージセンサーの暗電流にも影響するため、デバイスが作られる表層の無欠陥化が求められます。
SiCでは、積層欠陥が特に重要な信頼性の課題です。SiCは原子面の積み重ね方の違いで4H・6Hなど多くの結晶多形を持ち、積層欠陥ができるエネルギーが小さい材料です。ベーサル面転位(BPD)を起点に、通電時の再結合エネルギーによって積層欠陥が三角形や帯状に広がると、その領域が電流を妨げてオン電圧が上昇するバイポーラ劣化を引き起こします。