結晶欠陥(格子欠陥)とは、結晶中で原子の規則正しい配列が乱れた箇所のことで、広がりの次元によって点欠陥(空孔・格子間原子)、線欠陥(転位)、面欠陥(積層欠陥・双晶・粒界)、体積欠陥(析出物・ボイド)に分類されます。バンドギャップ中に準位を作ってリーク電流やライフタイム低下を招く一方、酸素析出物のようにゲッタリングに利用される欠陥もあります。
目次8項目
- 定義・解説
- 図解
- よくある質問
- 設備の製造メーカー
- 関連する製品
- 関連用語
- 比較・違いを学ぶ
- 出典・参考資料
定義・解説
結晶欠陥(格子欠陥)とは、原子が規則正しく並んだ結晶の中で、その周期的な配列が乱れている箇所のことです。現実の結晶に欠陥のまったくないものは存在せず、半導体では、欠陥の種類と量をデバイスに害のない範囲に抑えることが、結晶成長と熱処理の大きな目的になります。
結晶欠陥は、乱れが広がる次元によって4つに分類されます。原子1個分の乱れである点欠陥(0次元)、線に沿って続く転位(1次元)、面に沿って広がる積層欠陥・双晶・粒界(2次元)、体積を持つ析出物やボイド(3次元)です。
点欠陥は熱平衡の状態でも一定量が必ず存在し、温度が高いほど増えます。一方、転位や積層欠陥は熱平衡では存在しない欠陥で、結晶成長時の熱応力、格子定数の異なる材料の積層、酸化やイオン注入による点欠陥の過剰などが原因で生じます。これらは互いに関係しており、過剰な点欠陥が集まって転位ループや積層欠陥、ボイドになるというように、小さな欠陥が大きな欠陥の起点になります。
結晶欠陥の多くはデバイスに悪影響を与えます。欠陥の周囲では原子の結合が乱れてバンドギャップ中に準位ができ、それがキャリアの再結合中心やトラップとなって、pn接合のリーク電流を増やしたり少数キャリアのライフタイムを縮めたりします。転位に沿って金属不純物が析出すると、局所的な電流経路になることもあります。
一方で、欠陥を積極的に利用する技術もあります。CZシリコンの酸素析出物をウェハ内部に作り、金属不純物を捕まえるゲッタリングはその代表です。また、ポリシリコンや銅配線のような多結晶材料では、粒界の量と性質が抵抗や信頼性を左右するため、結晶粒の大きさの制御が重要になります。
図解
欠陥は「材料に内在する結晶欠陥」と「工程で持ち込まれる欠陥」に大別される ─ キラー欠陥かどうかは大きさと場所で決まる| 次元 | 種類 | 具体例 | 大きさの目安 | 半導体で問題になる場面 |
|---|
| 0次元 | 点欠陥 | 空孔、格子間シリコン、置換型・格子間型の不純物 | 原子1個分 | ドーパントの拡散、イオン注入の損傷 |
| 1次元 | 線欠陥 | 刃状転位、らせん転位 | 長さ µm〜mm | スリップ、ヘテロエピの貫通転位、SiC の BPD |
| 2次元 | 面欠陥 | 積層欠陥、双晶境界、粒界 | µm〜結晶全体 | 酸化誘起積層欠陥(OSF)、多結晶膜 |
| 3次元 | 体積欠陥 | 酸素析出物、ボイド(COP)、金属の析出物 | nm〜数百 nm | ゲッタリング(析出物)、ゲート酸化膜の耐圧低下(COP) |
個々の欠陥の詳細は、点欠陥・転位・積層欠陥・双晶・酸素析出物の各解説で扱っています。
結晶欠陥がデバイスに悪影響を与える主な経路は、バンドギャップの中にできるエネルギー準位です。 この準位は電子と正孔の再結合を仲立ちし、少数キャリアのライフタイム τ を縮めます。 準位の密度を Nt、キャリアを捕まえる断面積を σ、キャリアの熱速度を vth とすると、おおよそ次の関係になります。
τ ≈ 1 / (σ · vth · Nt)
σ = 10⁻¹⁵ cm²、vth = 10⁷ cm/s とすると、欠陥準位が 10¹² cm⁻³ ならライフタイムは約100 µs、 10¹⁴ cm⁻³ に増えると約1 µs です。欠陥が100倍に増えればライフタイムは100分の1になります。 バンドギャップの中央付近にある準位ほど、電子と正孔の両方を捕まえやすく、再結合中心として強く働きます。
ライフタイムの低下は、空乏層で発生する電流(発生電流)の増加として pn 接合のリークに現れます。
Jgen ≈ q · ni · W / τg
ni は真性キャリア濃度、W は空乏層幅、τg は発生ライフタイムです。リーク電流が欠陥の量に比例して増えるのはこのためで、 DRAM の電荷保持時間やイメージセンサーの暗電流が結晶品質に敏感な理由でもあります。
結晶欠陥は独立に生まれるのではなく、多くの場合、過剰な点欠陥が集まって大きな欠陥に育ちます。
| 出発点 | 集まってできる欠陥 | 典型的な場面 |
|---|
| 過剰な空孔 | 八面体のボイド(COP) | 空孔優勢の条件で育成した CZ 結晶の冷却中 |
| 過剰な格子間シリコン | 転位ループ・転位クラスタ | 格子間シリコン優勢の条件で育成した結晶 |
| 酸化で注入された格子間シリコン | 酸化誘起積層欠陥(OSF) | 熱酸化 |
| 過飽和の格子間酸素 | 酸素析出物(BMD)、さらに周囲の転位・積層欠陥 | デバイス工程の熱処理 |
| 注入でアモルファス化した層の端 | 転位ループ(EOR 欠陥) | 高ドーズ注入後の再結晶化アニール |
逆にいえば、点欠陥の量と行き先を制御できれば、大きな欠陥の発生も抑えられます。Grown-in欠陥の制御やプリアモルファス化注入の条件設計は、 いずれもこの考え方に立っています。
よくある質問(FAQ)
格子欠陥と結晶欠陥は同じですか?
ほぼ同じ意味で使われます。どちらも結晶の原子配列が周期性から外れた箇所を指し、点欠陥・線欠陥・面欠陥・体積欠陥に分類されます。文脈によっては、格子欠陥を点欠陥や転位のような原子配列そのものの乱れに限り、析出物のような別の相を含めない使い方もあります。
結晶欠陥はなぜデバイスに悪いのですか?
欠陥の周囲では原子の結合が乱れ、バンドギャップの中にエネルギー準位ができるためです。この準位がキャリアを捕まえたり、電子と正孔の再結合を仲立ちしたりすることで、pn接合のリーク電流の増加や少数キャリアのライフタイムの低下を招きます。金属不純物が欠陥に集まると、影響はさらに大きくなります。
結晶欠陥は完全になくせますか?
完全にはなくせません。空孔や格子間原子のような点欠陥は、熱平衡でも温度に応じて必ず存在するためです。ただし転位や積層欠陥のように熱平衡では存在しない欠陥は、結晶成長と熱処理の条件を管理することで、デバイスに影響しない水準まで減らせます。シリコンの単結晶インゴットは転位を含まない状態で量産されています。
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型番は各社の公式製品ページで確認したものです。出典のリンクは各製品ページに載せています。
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