Grown-in欠陥とは、シリコン単結晶の育成中、冷却の過程で過剰な点欠陥が集まってできる微小欠陥の総称です。引き上げ速度Vと温度勾配Gの比V/Gが約0.13mm²/(min·K)より大きいと空孔が集まったCOP、小さいと格子間シリコンが集まった転位クラスタができ、その境界付近にはOSFリングが現れます。V/Gを臨界値付近に保てば無欠陥結晶が得られます。
目次 7項目 定義・解説 図解 よくある質問 設備の製造メーカー 関連用語 比較・違いを学ぶ 出典・参考資料 定義・解説 Grown-in欠陥(成長時導入欠陥)とは、CZ法やFZ法でシリコン単結晶を育てる過程で、結晶が冷えていく間に導入される微小な欠陥の総称です。結晶が固まる時点で取り込まれた過剰な点欠陥(空孔や格子間シリコン)が、冷却中に集まって形成されます。ウェハに加工される前から結晶の中にあるため、デバイス工程では基本的に取り除けない欠陥です。
どちらの点欠陥が過剰になるかは、結晶の引き上げ速度 V と、成長界面近くの温度勾配 G の比 V/G で決まります(ボロンコフの理論)。V/G がおよそ0.13 mm²/(min·K) の臨界値より大きいと空孔が、小さいと格子間シリコンが優勢になります。空孔が優勢な領域では空孔が集まって八面体のボイド(COP)ができ、格子間シリコンが優勢な領域では格子間原子が集まって転位クラスタができます。
両者の境界付近には、ウェハを酸化するとリング状に積層欠陥が現れるOSFリングと呼ばれる領域があります。V/G は結晶の中心と外周で異なるため、ウェハ上では、COPの多い中心部、OSFリング、その外側の無欠陥領域や転位クラスタの領域というように、同心円状の分布として観察されます。
COPはゲート絶縁膜の耐圧を低下させ、転位クラスタは接合リークなどを招くため、いずれもデバイスにとって有害です。とくに転位クラスタは大きく害が大きいため、かつてはやや空孔が優勢な条件で結晶を育て、冷却条件でCOPを小さくする方法が一般的でした。
現在は、V/G を臨界値の近くに精密に保ち、COPも転位クラスタも含まない無欠陥結晶を育成する技術が確立しています。これに加え、水素やアルゴン雰囲気で高温アニールして表層のCOPを消すアニールウェハや、COPのない層を表面に成長させるエピタキシャルウェハも、Grown-in欠陥への対策として用途に応じて使い分けられています。
図解 V/G が臨界値(約0.13 mm²/(min·K))より大きいと COP、小さいと転位クラスタ ─ 境界に OSF リングが現れる V/G 優勢な点欠陥 冷却中にできる欠陥 主な検出方法 デバイスへの影響 臨界値より大きい 空孔 八面体のボイド(COP・FPD・LSTD) 表面のパーティクル検査、選択エッチング、IR-LST ゲート絶縁膜の耐圧低下 臨界値よりやや大きい 空孔(わずかに過剰) OSF リング(酸化で積層欠陥として現れる核) 酸化後の選択エッチング リーク、積層欠陥 臨界値付近 ほぼ釣り合う ほとんどなし(無欠陥領域) — — 臨界値より小さい 格子間シリコン 転位クラスタ(LDP) 選択エッチング 接合リーク、大型の欠陥
COP・FPD・LSTD は、同じ空孔型のボイドを検出方法の違いで呼び分けた名前です。
成長界面では、空孔と格子間シリコンがそれぞれほぼ平衡の濃度で結晶に取り込まれます。 その後、結晶が界面から遠ざかる(温度が下がる)につれて、2種類の点欠陥は互いに出会って再結合し、数を減らしていきます。 このとき、結晶の移動によって点欠陥が運ばれる効果は引き上げ速度 V に比例し、 温度勾配によって点欠陥が界面側へ拡散して戻る効果は G に比例します。 2つの効果の比 V/G によって、再結合の後にどちらの点欠陥が残るかが決まる、というのがボロンコフの理論です。
ξ = V / G, ξcrit ≈ 0.13 mm²/(min·K)
たとえば界面近くの温度勾配が G = 3 K/mm なら、臨界の引き上げ速度は V ≈ 0.13 × 3 ≈ 0.4 mm/min です。 これより速く引けば空孔側(COP)、遅く引けば格子間シリコン側(転位クラスタ)になります。
実際の結晶では、外周のほうが冷えやすく G が大きいため、V が一定でも V/G は中心で大きく外周で小さくなります。 ウェハ全面を無欠陥にするには、V の制御に加えて、径方向の G をそろえるように炉内の熱遮蔽や温度分布を設計する必要があります。
空孔が集まってボイドになるのは、結晶がおよそ1,100℃付近を通過するときです。 この温度域を速く通過させると、空孔が遠くまで移動できないうちに固まるため、小さなボイドが多数でき、 ゆっくり通過させると、少数の大きなボイドができます。 ゲート絶縁膜への影響は大きなボイドほど深刻なため、空孔優勢の結晶では冷却速度を上げて COP を小さくする方法が使われてきました。
方法 仕組み 無欠陥になる範囲 トレードオフ 無欠陥結晶の育成 V/G を臨界値付近に保つ ウェハ全体 引き上げ速度を抑える必要があり生産性が下がる アニールウェハ 水素・アルゴン中の高温アニールで表層の COP を消す 表層の数 µm 熱処理工程が加わる エピウェハ COP のない単結晶層を表面に成長させる エピ層全体 エピ工程のコストがかかる 急冷による COP の微細化 冷却速度を上げてボイドを小さくする なし(COP は残る) 最も安価だが効果は限定的
各方式の詳細はCOP ・アニールウェハ ・エピタキシャルウェハ の解説を参照してください。
よくある質問(FAQ) Grown-in欠陥とCOPの関係は? COPはGrown-in欠陥の一種です。結晶育成時に空孔が過剰になった条件で、空孔が集まってできる八面体のボイドをCOPと呼びます。反対に格子間シリコンが過剰な条件では転位クラスタが、その境界付近ではOSFリングが現れ、これらをまとめてGrown-in欠陥と呼びます。
V/Gとは何ですか? 結晶の引き上げ速度V(mm/min)と、成長界面近くの結晶側の温度勾配G(K/mm)の比です。この値が臨界値(約0.13 mm²/(min·K))より大きいと空孔が、小さいと格子間シリコンが結晶中に過剰に残ります。引き上げ速度だけでなく、炉内の温度分布を設計することで欠陥の種類と分布を制御します。
無欠陥結晶はどうやって作るのですか? V/Gを臨界値付近の狭い範囲に保って育成します。結晶の中心と外周では温度勾配が異なるため、引き上げ速度の制御に加えて、結晶の径方向でGがそろうよう炉内の熱遮蔽や温度分布を設計することが必要です。条件の幅が狭く、引き上げ速度も抑える必要があるため、生産性とのバランスが課題になります。
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