シリコンインゴットとは、ウェハに切り出す前の円柱状の単結晶シリコンの塊です。高純度多結晶シリコン(ポリシリコン)を原料に、CZ法またはFZ法で成長させたもので、直径は300mmウェハ用で約300mm、長さは2m前後、重量は数百kgに達します。1本のインゴットから数百枚から千枚規模のウェハが取れるため、その品質と歩留まりがウェハ価格の出発点になります。
CZ法では、石英ルツボ内で約1,420℃に溶かしたシリコン融液に種結晶を浸し、回転させながら毎分1mm前後の速度で引き上げます。工程は、①種付け、②ネッキング(細く絞って転位を消す)、③ショルダー(狙いの直径まで太らせる)、④ボディ(一定径で引き上げる)、⑤テール(徐々に細めて融液から離す)という順に進み、この形状制御がそのまま結晶の均一性を決めます。
インゴット内では、成長方向に沿って特性が変化します。ドーパントは融液に残りやすい(偏析)ため、引き上げが進むほど融液中の濃度が上がり、結晶の抵抗率は頭から尾に向かって下がっていきます。ルツボから溶け込む酸素の濃度も、融液が減るにつれて変化します。この軸方向の分布があるため、1本のインゴットから取れるウェハでも、規格に入る領域と外れる領域が生じます。
成長後のインゴットは、まず抵抗率・酸素濃度・欠陥密度・少数キャリア寿命を測定し、規格ごとに区分されます。次に外周を研削して直径を正確に揃え、結晶方位を示すノッチを加工し、規定の長さのブロックに切断してからスライス工程へ送られます。頭部・尾部の規格外領域は切り落とされ、原料として再溶解されます。
大口径化はウェハ1枚あたりのチップ取得数を増やしますが、インゴットの重量増加に伴い、ルツボの強度・融液の対流制御・引き上げ機構の剛性など装置側の難易度が上がります。300mmから450mmへの移行が長年実現しないのは、この技術的負担と設備投資額が、得られるコスト削減に見合わないと判断されているためです。