ALD装置の選び方(方式比較と選定チェックリスト)
最終更新:2026-10-07
要点
ALD装置は、数nmの薄膜や条件を頻繁に変える工程では枚葉式、膜が厚くパージ待ちを省きたい量産工程では空間分割式、DRAM・NANDの比較的厚い熱ALD膜ではバッチ式が候補になります。深い穴ほど必要なパルス時間がアスペクト比の約2乗で延びるため、膜厚と構造のアスペクト比を最初に確認するのが選定の出発点です。
方式の比較:まず「膜厚」と「穴の深さ」で絞る
ALD装置の方式は、1サイクルを時間で区切るか(枚葉式・バッチ式)、空間で区切るか(空間分割式)、何枚を同時に処理するかで分かれます。1サイクルで積める膜は約0.3〜2Åしかないため、どの方式もスループットとの戦いです。膜が数nmなら搬送・昇温などの付帯時間が、数十nmならサイクル時間が、深い穴ならパルス時間が処理時間を決めます。
| 方式 | 仕組み | 向いている膜・工程 | スループットが伸びる条件 | 注意点 | 代表機種 |
|---|---|---|---|---|---|
| 枚葉式(時間分割) | 1枚(または少数枚)をチャンバーに入れ、前駆体→パージ→反応ガス→パージを時間で切り替える | High-k/メタルゲート、パターニングのスペーサー、条件をウェハごとに変える工程 | 数nmの薄膜。チャンバー容積が小さくガス切替が速いほど有利 | 厚膜ではサイクル数×切替時間が積み上がる | ASM XP4 Pulsar・XP4 EmerALD、Lam Striker |
| 空間分割式(回転型) | ウェハを載せたサセプタを回し、ガスごとに仕切られた領域を通過させる。1回転=1サイクル | SiO₂・SiNなどの絶縁膜、低温成膜、ロジック・DRAM・3D NANDの量産工程 | パージ待ちがないので、膜が厚くなっても伸びが落ちにくい | ガスの仕切りと回転速度で使える化学反応・パルス時間が制約される | Applied Materials Olympia、TEL NT333(1チャンバー6枚×2チャンバー) |
| バッチ式(縦型炉・ミニバッチ) | 多数枚を炉に入れて一括で熱ALD。ミニバッチは枚数を絞ってガス置換を速くしたもの | DRAM・NANDの絶縁膜、比較的厚い熱ALD膜 | 膜が厚く、1枚あたりに時間を薄められるとき | 昇温・降温の付帯時間が長い。1回の異常で多数枚に影響する | TEL TELINDY PLUS IRad、KOKUSAI ELECTRIC TSURUGI-C² |
選定で確認する5つの質問
- 膜厚は何nmか。数nmなら付帯時間が支配的で枚葉式・空間分割式、数十nmならサイクル時間が支配的で空間分割式・バッチ式が候補になります。交点は方式別スループット比較ツールで試算できます。
- 構造のアスペクト比はいくつか。穴の底まで成膜するのに必要な露光量はアスペクト比のおよそ2乗で増えます。アスペクト比50以上ではパルス時間が秒単位になることがあり、前駆体の分圧を上げられるか、パルスを長く取れる方式かが効きます。段差被覆・露光量計算ツールで必要なパルス時間を見積もれます。
- 温度の上限はあるか。配線工程後やレジスト上の成膜では400℃以下、場合によっては200℃以下に制限されます。熱ALDで反応が進まない温度ではPEALD(プラズマALD)が必要で、下地へのプラズマダメージと段差被覆の両立を評価します。
- 膜種・条件をどれだけ頻繁に変えるか。多品種の研究開発ラインや、ウェハごとに膜厚を変える工程は枚葉式が扱いやすく、同じ条件を大量に流す量産工程はバッチ式・空間分割式の効率が生きます。
- 不良時の損失をどこまで許容できるか。バッチ式は1回の異常で数十〜100枚以上に影響します。高価な先端ロジックのウェハほど、1枚単位で止められる方式が選ばれやすくなります。
デモ・見積もりで比べる項目
| 項目 | 何を見るか | なぜ重要か |
|---|---|---|
| GPCと膜厚の線形性 | サイクル数に対して膜厚が直線的に増えるか、成長しない初期サイクル(核形成遅れ)は何サイクルか | 膜厚をサイクル数で正確に決めるALDの前提。下地によって核形成遅れが変わる |
| 面内・ウェハ間の均一性 | 膜厚の面内ばらつき(1σ・レンジ)、バッチ内の位置によるばらつき | 数nmの膜では0.1nmの差が電気特性に効く |
| 段差被覆(ステップカバレッジ) | 実際の構造(同じアスペクト比)での上部と底部の膜厚比 | 平坦なウェハのデータだけでは判断できない |
| 膜質 | 密度、ウェットエッチレート、不純物(C・Cl・H)、絶縁膜ならリーク電流・誘電率 | 温度を下げるほど不純物が増えやすい |
| パーティクル | 成膜前後で増えた異物の数(アダー)と、累積膜厚に対する変化 | チャンバー壁の堆積物が剥がれて歩留まりを落とす |
| スループット(WPH) | 実際の膜厚・レシピでの枚/時。付帯時間を含めた値か | カタログ値は条件が有利な場合が多い |
| 前駆体の消費量 | 1枚あたりの前駆体使用量と利用効率 | Hf・Zrなどの前駆体は高価で、ランニングコストを左右する |
| メンテナンス周期 | チャンバー洗浄までの累積膜厚、洗浄・部品交換にかかる時間 | 稼働率と1枚あたりのコストに直結 |
関連ページ
ALDの原理はALD(原子層堆積)、装置の方式とメーカーはALD装置、CVDとの違いはALDとCVDの違い、サイクル数と成膜時間はALDサイクル数・成膜時間計算ツールで確認できます。成膜装置全体のメーカーは成膜装置カテゴリにまとめています。
出典・参考資料
- ASM International「Atomic Layer Deposition (ALD)」(2026/10/07 確認)
- Lam Research「Striker Product Family」(2026/10/07 確認)
- Tokyo Electron「NT333™ Series」(2026/10/07 確認)
- Lam Research「Deposition」(2026/10/07 確認)
- Applied Materials「Olympia® ALD 製品ページ」(2026/10/07 確認)
- KOKUSAI ELECTRIC「製品情報」(2026/10/07 確認)
※ 段差被覆に必要な露光量のモデル:R. G. Gordon, D. Hausmann, E. Kim, J. Shepard, “A Kinetic Model for Step Coverage by Atomic Layer Deposition in Narrow Holes or Trenches”, Chemical Vapor Deposition 9 (2003) 73.