酸素析出物(BMD:Bulk Micro Defect)とは、CZシリコンに含まれる格子間酸素が熱処理によって集まり、SiOₓの微小な析出物として固まったものです。大きさは数nm〜数百nmで、ウェハの内部(バルク)に分布することからバルク微小欠陥(BMD)とも呼ばれます。
格子間酸素は結晶に取り込まれた時点で過飽和の状態にあり、熱処理によって析出が進みます。析出は、低温(600〜800℃程度)で析出の核ができ、高温(1,000℃前後)でその核が成長するという2段階で進むため、ウェハの熱履歴によって密度と大きさが大きく変わります。
BMDは使い方次第で有益にも有害にもなる欠陥です。ウェハの内部に適度な密度で存在すると、鉄・ニッケル・銅などの金属不純物を捕まえるゲッタリングサイトとして働き、デバイス領域を清浄に保ちます(イントリンシックゲッタリング)。一方、デバイスが作られる表面付近にBMDがあると、接合リークやゲート絶縁膜の不良の原因になります。
このため、表面から一定の深さまで析出物のない無欠陥層(デヌーデッドゾーン、DZ)を作り、その下の内部にだけBMDを形成する熱処理が行われます。高温で表面付近の酸素を外方拡散させてから、低温で核を作り、高温で成長させる「高温-低温-高温」の工程が古典的な方法で、急速熱処理でウェハ内の空孔の分布を作り込み、析出の起こる場所を制御する方法も実用化されています。
析出物は機械的な性質にも影響します。適度な析出物は転位の動きを止めてスリップを抑えますが、大きく成長しすぎると周囲に転位や積層欠陥を生じさせ、かえってウェハの強度を下げたり反りを増やしたりします。先端プロセスでは工程全体の熱処理量が減っており、デバイス工程の熱だけでは析出が十分に進まないことを前提に、ウェハ側で析出を設計する重要性が増しています。