欠陥(ディフェクト)とは、半導体の結晶・ウェハ表面・回路パターンに生じる、あるべき状態からのずれの総称です。原子配列の乱れである結晶欠陥(点欠陥・転位・積層欠陥・析出物)と、工程で持ち込まれるパーティクル・スクラッチ・パターン欠陥などに大別されます。回路を実際に壊すものをキラー欠陥と呼び、欠陥密度とクリティカルエリアから歩留まりが決まります。
目次6項目
- 定義・解説
- 図解
- よくある質問
- 設備の製造メーカー
- 関連用語
- 比較・違いを学ぶ
定義・解説
欠陥(ディフェクト、defect)とは、半導体の材料やウェハ、回路パターンに生じる、本来あるべき状態からのずれの総称です。結晶の原子配列の乱れ、表面に付着した異物、パターンの断線や短絡、膜中の電気的なトラップまで含む広い言葉で、どの工程で生じ、どの大きさで、デバイスのどの特性を損なうかによって分類されます。
大きく分けると、材料そのものに内在する結晶欠陥と、製造工程で持ち込まれるプロセス起因の欠陥があります。結晶欠陥には、原子1個分の乱れである点欠陥(空孔・格子間原子)、線状に続く転位、面状の積層欠陥や双晶、体積を持つ析出物やボイドがあります。プロセス起因の欠陥には、パーティクル(異物)、CMPによるスクラッチ、洗浄後のウォーターマーク、エッチング残渣、露光やエッチングの不良によるパターン欠陥などがあります。
欠陥がすべて不良につながるわけではありません。回路の動作を実際に損なう欠陥をキラー欠陥と呼び、同じ大きさの異物でも、配線の間に落ちれば短絡を起こし、パターンのない領域に落ちれば無害です。欠陥が不良を引き起こしうる領域の面積をクリティカルエリアと呼び、欠陥密度とクリティカルエリアから歩留まりを見積もるのが歩留まり管理の基本です。
欠陥の検出には、対象ごとに異なる手段が使われます。ウェハ表面の異物やパターン欠陥は光学式・電子線式の欠陥検査装置で、結晶欠陥は選択エッチングで浮かび上がらせるエッチピット観察、X線トポグラフィ、透過電子顕微鏡(TEM)などで調べます。膜中や界面の電気的な欠陥は、リーク電流や容量の測定、少数キャリアのライフタイム測定といった電気的な評価で捉えます。
微細化が進むほど、許容される欠陥の大きさは小さくなります。ゲート絶縁膜が数nmになった世代では数十nmの結晶起因のボイドが絶縁不良を招き、線幅が数nm〜数十nmの配線では、それより小さな異物でも短絡の原因になります。欠陥の低減は材料・装置・工程のすべてにまたがる課題であり、ファブの歩留まりを直接左右します。
図解
欠陥は「材料に内在する結晶欠陥」と「工程で持ち込まれる欠陥」に大別される ─ キラー欠陥かどうかは大きさと場所で決まる「欠陥」は非常に広い言葉で、原子1個の乱れから目に見える傷までを含みます。 対策を考えるときは、どの工程で生まれ、デバイスのどの特性を壊すのかで整理すると見通しがよくなります。
| 分類 | 代表例 | 主な発生工程 | デバイスへの影響 |
|---|
| 点欠陥 | 空孔・格子間シリコン・不純物原子 | 結晶成長・イオン注入・熱処理 | ドーパント拡散の加速、キャリアの捕獲 |
| 線欠陥 | 転位・スリップ | 熱応力・ヘテロエピ・注入後の熱処理 | 接合リーク、耐圧の低下 |
| 面欠陥 | 積層欠陥(OSF)・双晶・粒界 | 酸化・エピ成長・結晶成長 | リーク、エピ層の品質低下 |
| 体積欠陥 | 酸素析出物(BMD)・ボイド(COP) | 結晶成長・熱処理 | ゲート絶縁膜の耐圧低下(COP)、ゲッタリング(BMD) |
| 異物・表面欠陥 | パーティクル・スクラッチ・ウォーターマーク・残渣 | 搬送・CMP・洗浄・エッチング | 配線の短絡・断線、膜の異常成長 |
| パターン欠陥 | ブリッジ・断線・パターン欠け | 露光・エッチング | 回路の短絡・断線 |
| 電気的欠陥 | 界面準位・膜中トラップ | 酸化・成膜・プラズマ工程 | しきい値電圧の変動、リーク、信頼性の劣化 |
結晶に由来する欠陥は結晶欠陥、成長時に入るものはGrown-in欠陥、 工程の異物はパーティクル汚染やスクラッチの解説で詳しく扱っています。
欠陥が不良になるかどうかは、欠陥の大きさと落ちた場所の組み合わせで決まります。 間隔 s で並んだ長さ L の2本の配線に、直径 d の異物が落ちる場合を考えます。 短絡が起きるのは異物が両方の配線にかかる位置に落ちたときで、その位置の範囲の面積(クリティカルエリア)は次のように書けます。
Ac(d) ≈ L · (d − s) (d > s のとき。d ≦ s なら 0)
配線間隔より小さな異物はいくつ落ちても短絡を起こさず、大きくなるほど致命的な場所が広がります。 一方で、欠陥の数は大きさのおよそ3乗に反比例して小さいものほど多いとされます。 この2つを掛け合わせると、「配線間隔より少し大きい」欠陥が歩留まりを最も損なうことになり、 検査装置の感度を最小の配線間隔に合わせて引き上げ続ける理由がここにあります。
Y ≈ exp(−Ac · D0)
クリティカルエリアと欠陥密度 D0 から歩留まりを見積もるのが、歩留まり管理の基本の式です。 検査で見つかった欠陥のうち、このクリティカルエリアに入りうるものを優先して対策することで、限られた工数を歩留まりに直結させます。
| 対象 | 手法 | 見えるもの |
|---|
| 表面の異物・パターン欠陥 | 光学式検査(明視野・暗視野) | 数十 nm 級の異物やパターン異常の位置。高速でウェハ全面を検査できる |
| 微小なパターン欠陥・導通不良 | 電子線検査(電位コントラスト) | 光学式で見えない微小欠陥や、埋もれたビアの導通不良 |
| 結晶欠陥(簡便) | 選択エッチング+光学顕微鏡 | 転位や積層欠陥の周囲が速く溶けてできるピット |
| 結晶欠陥(非破壊) | X線トポグラフィ | ウェハ全面の転位・スリップの分布 |
| 結晶欠陥(原子レベル) | 透過電子顕微鏡(TEM) | 転位の種類、積層欠陥の構造 |
| 金属汚染・電気的欠陥 | ライフタイム測定、DLTS | 再結合中心の量、トラップ準位のエネルギー |
表面の欠陥の検出と分類は欠陥検査、 不良品から原因を突き止める手順は故障解析の解説を参照してください。
よくある質問(FAQ)
ディフェクトと欠陥は違うものですか?
同じ意味です。ディフェクトは英語の defect をカタカナにしたもので、半導体の現場では、特にウェハ表面の異物・傷・パターン不良など、検査で見つかる欠陥を指して使われることが多い言葉です。一方で「欠陥」は、結晶欠陥のような材料内部の乱れまで含む広い意味で使われます。
キラー欠陥とは何ですか?
回路の動作を実際に損ない、チップを不良にする欠陥のことです。欠陥の影響は大きさと落ちた場所で決まり、配線の間隔より大きな異物が配線をまたげば短絡を起こしますが、同じ異物でもパターンのない領域なら無害です。見つかった欠陥のうちキラー欠陥になりうるものを見分けて対策の優先順位を付けることが、歩留まり改善の要になります。
欠陥はどのように検出しますか?
対象によって手段が異なります。ウェハ表面の異物やパターン欠陥は光学式・電子線式の欠陥検査装置で位置を検出し、レビュー用のSEMで形状を確認します。結晶欠陥は選択エッチングでピットとして浮かび上がらせる方法やX線トポグラフィ、TEMで観察し、膜中や界面の電気的な欠陥はリーク電流やライフタイムの測定で捉えます。
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