HBT(Heterojunction Bipolar Transistor、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)とは、エミッタとベースの接合にバンドギャップの異なる材料のヘテロ接合を使ったバイポーラトランジスタです。エミッタにベースよりバンドギャップの広い材料を使うことで、通常のバイポーラトランジスタよりはるかに高い周波数で、大きな電流増幅率を得られます。この原理はノーベル物理学賞を受賞したハーバート・クレーマーが1950年代に提唱しました。
通常のバイポーラトランジスタで電流増幅率を高くするには、エミッタの不純物濃度をベースよりずっと高くして、ベースからエミッタへ正孔が逆流するのを抑える必要があります。すると、ベースは濃度を低くしなければならず、抵抗が高くなって高周波の性能が伸びません。HBTでは、エミッタとベースの間のバンドの段差が正孔の逆流を防ぐため、ベースを高濃度で薄くしても大きな電流増幅率を保てます。ベースの抵抗が下がり、電子がベースを通り抜ける時間も短くなるため、遮断周波数(fT)や最大発振周波数(fmax)が大きく向上します。
代表的なHBTには3種類あります。InGaP/GaAs HBTは、高い電力効率と耐久性から、スマートフォンの送信用パワーアンプの主流です。SiGe HBTは、ベースにシリコンゲルマニウムを使うもので、CMOSと同じシリコンのウェハ上に作れるBiCMOSプロセスとして、77GHz帯の車載レーダーや光通信、衛星通信のICに使われます。InP HBTは最大発振周波数が数百GHzを超え、超高速の光通信や次世代無線(サブテラヘルツ帯)の研究開発に使われています。GaAsやInPのHBTは、MOCVDやMBEで作ったエピタキシャルウェハの上に形成します。