律速(りっそく)とは、いくつかの過程が順番に進む反応や現象で、最も遅い過程が全体の速さを決めてしまうことです。その最も遅い過程を律速過程または律速段階と呼びます。たとえ他の過程がどれほど速くても、全体は一番遅い過程の速さでしか進みません。細い瓶の首が注ぐ速さを決めることから、ボトルネックと同じ考え方です。化学反応の速度論から来た言葉で、半導体の成膜・酸化・拡散などの工程を理解するうえで基本となる概念です。
代表例がCVD(化学気相成長)の成膜速度です。CVDでは、ガスが表面まで運ばれる「供給」と、表面で化学反応して膜になる「反応」の2つの過程が順に進みます。温度が低いときは表面の反応が遅く、反応が律速になります(反応律速・表面反応律速)。このとき成膜速度は温度に強く依存しますが、ガスの流れ方の影響は受けにくいため、ウェハを多数並べても膜厚がそろい、細かい段差の中まで均一に付きます。温度が高いと反応は速くなり、ガスの供給が追いつかなくなって供給律速(拡散律速)になります。成膜速度はガスの流れに左右され、温度にはあまり依存しなくなります。多数のウェハを一度に処理する減圧CVD(LPCVD)が反応律速の条件で使われるのはこのためです。
シリコンの熱酸化でも律速の切り替わりが見られます。酸化の初期は表面での反応が律速で、膜厚は時間にほぼ比例して増えます(線形則)。酸化膜が厚くなると、酸素が膜の中を通ってシリコンとの界面まで拡散する過程が律速となり、膜厚は時間の平方根に比例してしか増えなくなります(放物線則)。温度を変えて速度を測り、アレニウスプロットの傾きの変化から律速過程の切り替わりを見分ける方法もよく使われます。