フォーミングガス(Forming Gas)とは、窒素(N₂)に数%程度の水素(H₂)を混ぜた混合ガスのことです。水素の還元作用(酸化物から酸素を奪う働き)を利用しながら、水素の濃度を燃えない範囲に抑えているため、純粋な水素より安全に扱えるのが特徴です。半導体の製造では、トランジスタの界面を改善する熱処理と、金属の表面の酸化を防ぐ・取り除く用途に使われます。
最も重要な用途が、フォーミングガスアニール(FGA)と呼ばれる熱処理です。MOSトランジスタのシリコンとゲート酸化膜の界面には、結合の相手がいないダングリングボンドが残り、キャリアを捕まえる界面準位となって、しきい値電圧のずれや移動度の低下、雑音の増加を招きます。製造工程の最後のほうで、フォーミングガス中で400〜450℃程度に加熱すると、水素がダングリングボンドに結合して終端し、界面準位を大幅に減らせます。配線を形成した後に行うことが多く、アルミニウムや銅の配線が耐えられる温度で効果を得られる点も利点です。
フォーミングガスは実装の工程でも使われます。はんだ付けやダイボンディング、銅のワイヤボンディングでは、金属の表面の酸化膜がはんだの濡れや接合を妨げるため、フォーミングガスの雰囲気で酸化を防ぎ、場合によっては薄い酸化膜を還元します。フラックスを使わない(フラックスレス)実装の手段としても使われます。銅配線のめっき後の熱処理でも、酸化を防ぎながら結晶粒を成長させるために水素を含む雰囲気が使われます。