SOA(Safe Operating Area、安全動作領域)とは、パワー半導体が壊れずに動作できる電圧と電流の組み合わせの範囲のことです。データシートでは、横軸にドレイン・ソース間電圧(IGBTではコレクタ・エミッタ間電圧)、縦軸に電流をとった両対数のグラフとして示され、パルスの幅ごとに境界の線が描かれています。回路の設計では、動作中の電圧と電流がすべてこの範囲の内側に収まるように素子を選びます。
SOAの境界は、いくつかの制限で決まります。左上はオン抵抗で決まる電流の上限、上側は最大の電流定格、右側は最大の電圧定格(耐圧)です。その間の斜めの線は、素子で消費される電力による発熱の制限(熱的な限界)を表し、パルスの幅が短いほど温度が上がりきらないため、より広い範囲で使えます。バイポーラトランジスタでは、電流が局所に集中して壊れる2次降伏の制限が加わります。データシートのSOAは通常ケース温度25℃での値なので、実際の使用温度に合わせて範囲を狭める(ディレーティングする)必要があります。
IGBTでは用途に応じて、ターンオン時の順バイアスSOA(FBSOA)、ターンオフ時に高い電圧と電流が同時にかかる逆バイアスSOA(RBSOA)、短絡時の短絡SOA(SCSOA)が規定されます。また、微細化でセルを高密度にした最近のパワーMOSFETでは、電圧と電流が同時にかかる線形領域で使うと、温度が上がるほど電流が増える局所的な熱暴走(スピリト効果)が起こり、SOAが狭くなることが知られています。突入電流の制限やホットスワップ、電子負荷のように、MOSFETを線形領域で使う回路では、SOAの確認が特に重要です。