アバランチ耐量とは、パワー半導体に耐圧(降伏電圧)を超える電圧がかかって、アバランチ降伏(なだれ降伏)が起きたときに、壊れずに吸収できるエネルギーの大きさのことです。パワーMOSFETのデータシートでは、1回のパルスで耐えられる単発アバランチエネルギー(EAS)や、繰り返しで耐えられる繰り返しアバランチエネルギー(EAR)、アバランチ電流(IAR)として示されます。
アバランチ降伏は、空乏層の強い電界で加速されたキャリアが原子にぶつかって新しい電子と正孔を次々と生み出し、電流がなだれのように急増する現象です。実際の回路でこれが起こりやすいのは、モーターやトランスのコイルなど誘導性の負荷の電流をトランジスタで切ったときです。コイルは電流を流し続けようとして高い電圧を発生させ、トランジスタの耐圧を超えると、コイルに蓄えられていたエネルギー(E=½LI²)がトランジスタの中で熱として消費されます。この条件を模擬する試験を、UIS(Unclamped Inductive Switching)試験と呼びます。
アバランチ時の破壊は、発熱による温度上昇のほか、MOSFETの中にある寄生のバイポーラトランジスタが動作して電流が局所に集中することで起こります。そのため素子の構造や、チップの周辺の耐圧を保つ終端構造の設計が耐量を左右します。シリコンやSiCのMOSFETはアバランチ耐量を持つように設計されていますが、横型のGaN HEMTは原理的にアバランチ降伏を起こさずに壊れるため、耐圧に大きな余裕を持たせて使います。回路側では、スナバ回路やクランプ回路でサージ電圧を抑え、アバランチ状態に入らないように設計するのが基本です。