フェルミ・ディラック分布とは、ある温度のときに、エネルギーEの状態が電子で占められている確率を表す関数です。f(E)=1/{1+exp((E−EF)/kT)}と書き、EFはフェルミ準位、kはボルツマン定数、Tは絶対温度です。電子は同じ状態に2個以上入れない(パウリの排他原理)という性質を持つため、古典的な粒子とは違うこの分布に従います。
絶対零度では、フェルミ準位より低い状態はすべて電子で埋まり(f=1)、高い状態はすべて空(f=0)という階段の形になります。温度が上がると、フェルミ準位の近くの数kT(室温で数十meV)の範囲だけが滑らかに崩れ、一部の電子が上の状態へ移ります。フェルミ準位の位置では、温度によらず占有確率がちょうど1/2になります。
半導体の電子の密度は、この占有確率に状態密度を掛けてエネルギーで足し合わせて求めます。ふつうの半導体ではフェルミ準位がバンドの端から数kT以上離れているため、分布の裾をボルツマン分布で近似でき、計算が簡単になります。一方、不純物を非常に多く加えた縮退半導体や金属では、フェルミ・ディラック分布をそのまま使う必要があります。