誘電率(Permittivity)とは、絶縁体(誘電体)が電界の中でどれだけ電荷を蓄えやすいか(分極しやすいか)を表す値です。半導体では、真空の誘電率に対する比を表す比誘電率(εr、Dielectric Constant)を使うのが一般的で、k値とも呼ばれます。2枚の電極の間に絶縁体を挟んだコンデンサの容量は、比誘電率に比例し、絶縁体の厚さに反比例します。
代表的な材料の比誘電率の目安は、真空が1、空気がほぼ1、シリコン酸化膜(SiO₂)が約3.9、窒化シリコンが約7、酸化アルミニウムが約9、酸化ハフニウム(HfO₂)が約20〜25、シリコンが約11.7、GaAsが約12.9です。配線の層間に使う低誘電率膜(SiOCなど)は2.5〜3.0程度、多孔質の膜では2.5を下回ります。プリント基板のFR-4は4前後、水は約80と非常に大きな値です。
半導体では、場所によって求められる誘電率が正反対です。トランジスタのゲート絶縁膜では、ゲートがチャネルを強く制御できるよう大きな容量が必要ですが、酸化膜を薄くしすぎると電子がトンネルしてリーク電流が増えます。そこで、誘電率の大きい高誘電率(High-k)膜を使い、物理的には厚くしながら、酸化膜に換算して薄い膜と同じ容量を得ます(EOT)。一方、配線の間の絶縁膜では、隣の配線との容量が信号の遅延と消費電力を増やすため、誘電率の小さい低誘電率(Low-k)膜や、空気の隙間を使うエアギャップが使われます。高速の基板でも、信号の損失や遅延を抑えるため、誘電率と誘電正接の小さい材料が選ばれます。