ヒロック(Hillock)とは、金属配線や金属膜の表面にできる小さな丘状の突起のことです。英語で「小山」を意味します。半導体では、アルミニウム(Al)配線を中心に、銅(Cu)配線や電極の金属膜でも発生し、高さは数十nmから数μmに達することがあります。配線の上に形成する絶縁膜を突き破ったり、段差を作って露光の焦点を狂わせたりするため、配線工程の代表的な欠陥の一つです。
主な原因は、金属とシリコンの熱膨張の違いによる応力です。アルミニウムの熱膨張係数はシリコンの約9倍あり、成膜後の熱処理でウェハを加熱すると、シリコン基板に拘束された金属膜の中に大きな圧縮応力が生じます。この応力を逃がすように、金属原子が結晶粒界などを通って拡散し、表面の一部に盛り上がってヒロックになります。反対に冷却時に生じる引っ張り応力で原子が抜けると、配線の中にボイド(空洞)ができるストレスマイグレーションになり、ヒロックとボイドは表裏の関係にあります。電流で原子が運ばれるエレクトロマイグレーションでも、原子が溜まる側(陽極側)にヒロックが、抜ける側にボイドが生じます。
ヒロックが上下や隣の配線に届くと短絡を起こし、配線の上の層間絶縁膜の平坦性や信頼性も損ないます。対策としては、アルミニウムに銅やシリコンを少量加えた合金にして原子の移動を抑える、TiやTiNなどの膜で配線の上下を挟んで押さえ込む、熱処理の温度と時間(サーマルバジェット)を抑える、といった方法が取られます。検査では光学式の欠陥検査やSEM観察で突起の密度と高さを管理します。