クヌーセン数(Kn)とは、気体の分子が他の分子にぶつかるまでに進む平均の距離(平均自由行程λ)と、配管の直径やすき間の幅などの代表的な長さLの比(Kn=λ/L)です。気体の流れ方が、分子どうしがぶつかり合う流体としてのふるまいになるか、分子が壁にぶつかりながら1つずつ飛ぶふるまいになるかを判断する目安です。デンマークの物理学者クヌーセンの名前から来ています。
クヌーセン数が小さい(おおむね0.01未満)ときは、分子どうしが頻繁にぶつかり、気体は粘り気のある流体のように流れます(粘性流)。大きい(おおむね0.5〜1以上)ときは、分子どうしはほとんどぶつからず、壁にぶつかりながら飛ぶ分子流になります。その間は中間流と呼ばれます。圧力が下がるほど平均自由行程が長くなるため、同じ配管でも真空度が上がるとクヌーセン数が大きくなります。
半導体の製造では、配管の設計だけでなく、ウェハの上の細かい構造の中のガスの動きを考えるときにも使われます。深い穴や溝の幅は数十nm程度と非常に小さいため、ふつうの圧力でも穴の中ではクヌーセン数が大きくなり、ガスの分子は壁にぶつかりながら奥へ進みます。この性質が、深い穴の底まで膜が付きにくいことや、エッチングが奥ほど遅くなる現象(ARDE)の理由の1つです。