超高真空(UHV:Ultra-High Vacuum)とは、圧力が非常に低い真空の領域で、日本産業規格では10⁻⁵Pa以下と定められています。実際の装置では10⁻⁷〜10⁻⁹Pa程度の圧力で使われることが多く、さらに低い10⁻⁸Pa以下は極高真空と呼ばれることもあります。この圧力では、気体の分子が他の分子にぶつかるまでに数km以上も進みます。
超高真空が必要な理由の1つは、表面をきれいに保つためです。圧力が10⁻⁴Pa程度だと、きれいにした表面は数秒で残った気体の分子1層に覆われてしまいますが、10⁻⁸Pa程度なら数時間以上きれいなまま保てます。そのため、原子の層を1層ずつ積む分子線エピタキシー(MBE)、表面の元素を調べるXPSなどの表面分析、電子顕微鏡の電子銃などで超高真空が使われます。
超高真空を作るには、ポンプの性能だけでなく、チャンバーからのガスの放出を極限まで減らす必要があります。ステンレスなどの放出ガスの少ない材料を使い、ゴムのOリングの代わりに銅のガスケットで締め付けるフランジ(コンフラットフランジ)を使います。組み立て後は、チャンバー全体を150〜250℃程度に加熱するベーキングで水分を追い出し、イオンポンプやクライオポンプ、チタンサブリメーションポンプなどで排気します。