分子流と粘性流とは、真空の配管やチャンバーの中の気体の流れ方の2つの状態です。粘性流は、圧力が比較的高く、気体の分子どうしが頻繁にぶつかり合いながら、水の流れのように全体としてまとまって流れる状態です。分子流は、圧力が低く、分子どうしはほとんどぶつからず、1つ1つの分子が配管の壁にぶつかりながら、ばらばらに飛んでいく状態です。その間の状態を中間流と呼びます。
どちらになるかは、分子の平均自由行程と配管の太さの比(クヌーセン数)で決まります。ふつうの太さの配管では、大気圧からおおむね数十〜数Pa程度までが粘性流、0.1Pa程度より低い圧力では分子流になります。粘性流では、配管の流れやすさ(コンダクタンス)が圧力に比例して大きくなりますが、分子流では圧力によらず一定になり、配管の太さと長さだけで決まります。
この違いは真空の装置の設計に大きく影響します。大気圧から排気する最初の段階は粘性流で、ドライポンプなどで大量の気体を速く引けます。高真空の領域では分子流になり、分子が偶然ポンプの入り口に飛び込むのを待つことになるため、ターボ分子ポンプを太く短い配管でチャンバーに直結して、コンダクタンスを大きくします。細く長い配管は、分子流の領域では排気の速さを大きく下げてしまいます。