質量作用の法則とは、熱平衡状態にある半導体では、電子の密度nと正孔の密度pの積が、不純物の量に関係なく一定(真性キャリア密度niの2乗)になるという関係です。式で書くとnp=ni²で、「np積一定の法則」とも呼ばれます。もともとは化学反応の平衡を表す法則で、半導体では電子と正孔が生まれる反応と消える反応(再結合)のつり合いとして同じ形が成り立ちます。
この関係を使うと、多数キャリアから少数キャリアの密度を簡単に求められます。たとえば室温のシリコン(ni≒1×10¹⁰cm⁻³)にリンを1×10¹⁶cm⁻³加えたn型半導体では、電子の密度nはほぼ1×10¹⁶cm⁻³で、正孔の密度はp=ni²/n=1×10⁴cm⁻³と、電子の1兆分の1になります。不純物を加えて一方のキャリアを増やすと、もう一方は同じ割合で減るということです。
成り立つのは熱平衡の状態だけで、光を当てたり電流を流したりしてキャリアを外から注入しているときはnp>ni²に、空乏層のようにキャリアが引き抜かれている領域ではnp<ni²になります。niは温度とバンドギャップで大きく変わるため、高温ではnp積も急に大きくなります。pn接合の電流やトランジスタの特性を計算するときの出発点になる、半導体物理の最も基本的な関係の1つです。