逆格子とは、結晶の原子の並び(実空間の格子)をもとに、数学的に作られるもう1つの格子のことです。実空間の格子の基本の長さ(格子定数)が大きいほど、逆格子の間隔は小さくなる、という「逆」の関係にあります。逆格子の1つ1つの点は、実空間の結晶の中のある向きの格子面の組に対応しており、その点への方向は面に垂直な向き、原点からの距離は面間隔の逆数に比例します。
逆格子は、波と結晶のかかわりを考えるときに便利な道具です。X線回折では、入射したX線と回折したX線の波の向きの差(散乱ベクトル)が、逆格子の点に一致したときだけ強い回折が起こります。これはブラッグの式と同じ条件を、別の形で表したものです。単結晶の回折の模様(逆格子マップ)を測ると、エピタキシャル膜のひずみや組成、結晶の傾きを一度に評価できます。
半導体の電子の性質も、逆格子の空間(波数の空間)で考えます。結晶の中の電子のエネルギーと波数の関係(バンド構造)は、逆格子の基本の単位であるブリルアンゾーンの中で描かれます。シリコンの伝導帯の底がどの方向にあるか、直接遷移型か間接遷移型かといった性質も、この空間で表されます。