重要鉱物(クリティカルミネラル)とは、経済や安全保障にとって欠かせない一方で、産出や精錬が特定の国に偏っていて供給が途絶するリスクの高い鉱物資源を指します。どの鉱物を重要鉱物とするかは国ごとに定められ、米国は地質調査所(USGS)が、EUは重要原材料法で、日本は経済安全保障推進法の特定重要物資として指定しています。半導体は多くの重要鉱物に依存する産業の一つです。
半導体製造に関係する代表的な重要鉱物は次のとおりです。(1)ガリウム:GaNやGaAsなどの化合物半導体の原料。(2)ゲルマニウム:SiGeトランジスタや光通信用部品に使われます。(3)タングステン:配線のコンタクトやビアに埋め込む金属で、原料ガスWF₆にも使われます。(4)レアアース(希土類):セリウムはCMP研磨剤(セリアスラリー)に使われます。そのほかタンタル・ハフニウム・コバルト、フッ化水素の原料となる蛍石なども重要です。
重要鉱物のリスクが顕在化したのは、中国による輸出管理の強化です。中国は世界のガリウム生産の大半とゲルマニウム生産の過半を占めており、2023年8月にガリウムとゲルマニウムの輸出を許可制とし、2024年12月には米国向けの輸出を原則禁止しました。さらに2025年にはレアアースの一部にも輸出管理を広げており、米国の半導体輸出規制に対する対抗措置と受け止められています。
対策として各国は、調達先の多様化、備蓄、国内や友好国での精錬能力の構築、リサイクルの強化を進めています。日本ではJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が海外の鉱山や精錬事業への出資を支援しています。ただし精錬には環境負荷やコストの問題があり、特定国への依存を短期間で解消するのは難しいとみられています。