慣性センサーとは、物体の動きそのものを測るセンサーの総称で、直線的な加速度を測る加速度センサーと、回転の速さを測るジャイロセンサー(角速度センサー)を指します。外部の基準を必要とせず自分の動きだけで測れるため、電波の届かない場所でも姿勢や移動を把握できます。スマートフォンの画面の向き、ゲーム機の操作、車の横滑り防止、ドローンの姿勢制御などに使われています。
半導体で作られる慣性センサーは、MEMSの技術で小さな錘(おもり)とばねをシリコンに作り込んだ構造をしています。加速度が加わると錘がわずかに動き、その変位を電極間の静電容量の変化として読み取ります。ジャイロは錘を常に振動させておき、回転したときに直交方向へ働くコリオリの力による振動を検出する仕組みです。動く部分を作るため、犠牲層を抜いて構造を浮かせる工程が欠かせません。
設計で難しいのは、測りたい信号が極めて小さいことです。錘の変位はナノメートル単位で、容量の変化も微小なため、検出回路をセンサーのすぐ隣か同じパッケージに置いて雑音を抑えます。温度で特性がずれる、落下などの衝撃で壊れる、といった課題もあり、構造と回路と封止をまとめて設計する必要があります。車載では故障を検知する仕組みまで作り込むことが求められます。