犠牲層とは、構造を作る途中で下敷きとして置き、最後に溶かして取り除くための膜です。取り除いたあとに空間が残るため、宙に浮いた梁や膜、動く部品を半導体の平面的な工程だけで作ることができます。MEMSの基本手法である表面マイクロマシニングは、この考え方で成り立っています。
典型的な流れは、犠牲層として酸化膜を成膜し、その上に構造材としてポリシリコンを積んで形を作り、最後にフッ酸で酸化膜だけを溶かす、というものです。構造材を残して犠牲層だけを選んで溶かせるかどうか(選択比)が設計の要になります。配線や絶縁膜まで一緒に溶けてしまっては成立しません。
最後の工程で起きやすい問題が、スティクションです。溶かした液を乾かすとき、表面張力で浮いているはずの梁が下地に引き寄せられ、くっついたまま離れなくなります。これを避けるため、超臨界乾燥や、液を使わない気相でのエッチングが使われます。先端ロジックのエアギャップ配線も、犠牲層を抜いて空洞を残す点では同じ発想です。