油拡散ポンプ(ディフュージョンポンプ)とは、底にためた専用の油をヒーターで加熱して蒸発させ、その油の蒸気を上から下へ向けて高速で噴き出させ、噴流にぶつかった気体の分子を下へはじき飛ばして排気する真空ポンプです。高真空の領域で大きな排気速度を出せます。回転する部品がなく、構造が簡単で丈夫で、大きな排気速度のものを安く作れるのが特長です。
油拡散ポンプは大気圧からは動かせないため、排気側にロータリーポンプなどの補助ポンプをつなぎ、ある程度圧力を下げてから運転します。下へ運ばれた気体は補助ポンプが外へ出し、噴き出した油の蒸気は冷やされた壁で液体に戻って底へ流れ、再び加熱されて循環します。
最大の弱点は、油の蒸気がチャンバーの側へ逆流する(バックストリーミング)ことで、わずかな油でも表面の汚染の原因になります。冷却したトラップやバッフルで抑えますが、完全には防げません。そのため、清浄さが厳しく求められる半導体の製造装置では、ターボ分子ポンプやクライオポンプに置き換わりました。現在も、大きな真空の容器を持つ蒸着装置や、真空の熱処理炉、研究用の装置などで使われています。