六フッ化タングステン(WF6)とは、タングステン1個にフッ素6個が結びついた化合物で、半導体の製造でタングステンの膜をCVD(化学気相成長)で作るための原料ガスです。常温では液体ですが、沸点が約17℃と低いため、少し温めるだけで気体になり、ガスとして装置に送ります。
WF6を水素(H2)やシラン(SiH4)と一緒に加熱した基板の上に流すと、反応してタングステンが析出し、膜になります。タングステンのCVDは、細く深い穴の中まで均一に金属を埋め込めるため、トランジスタと配線をつなぐコンタクトや、配線の層どうしをつなぐビアの埋め込みに使われてきました。3D NANDでは、何十層も積み重ねたメモリセルのワード線(ゲートの電極)にもタングステンが使われ、WF6の需要を大きく押し上げています。
WF6は腐食性と毒性が強く、空気中の水分と反応すると、フッ化水素(HF)を発生します。そのため、漏えいを検知する設備のあるシリンダーキャビネットで扱い、排気は除害装置で処理します。また、膜の中にフッ素が残ると下の層を傷めるため、窒化チタンなどのバリアの膜を先に付けたり、フッ素を含まない原料に切り替える研究も進められています。