OTセキュリティとは、工場の装置や制御システム(OT:Operational Technology)を、マルウェアや不正侵入から守る取り組みです。事務所のパソコンやサーバを守るITセキュリティと目的は同じですが、守る対象が「動いている生産ライン」である点が決定的に違います。半導体工場では数百台の製造装置がネットワークにつながっており、1台が止まれば仕掛かり中のウェハが失われ、復旧までの数日分の生産が消えます。
ITとOTで優先順位が逆になるのが最大の特徴です。ITでは情報が漏れないこと(機密性)が最優先ですが、OTでは装置が止まらないこと(可用性)が最優先になります。そのため、ITの世界では当たり前のセキュリティパッチの即時適用や自動再起動が、OTではそのまま適用できません。パッチを当てるには装置を止める必要があり、止めるには生産計画との調整が要るためです。
半導体業界がこの問題を強く意識するようになったのは、2018年にTSMCの複数工場がマルウェア感染で停止し、四半期の売上に数パーセント規模の影響が出た事例以降です。これを受けて業界団体SEMIが装置向けのセキュリティ規格(SEMI E187・E188)を整備し、現在は装置の購入仕様書にセキュリティ要件を書き込むことが一般的になっています。