パッシベーション(Passivation)とは、表面を化学的・電気的に不活性(パッシブ)な状態にして、外部の影響から保護することです。半導体では主に、チップの最上層を覆って配線や素子を水分・イオン・傷から守る保護膜(パッシベーション膜)を形成することを指します。このほか、半導体の表面の欠陥を不活性にして電気的な特性を良くする表面パッシベーション、金属の表面に酸化被膜を作って腐食を防ぐ不動態化の意味でも使われます。
チップの保護膜としてのパッシベーションは、前工程の最後に行われます。多層配線の最上層の上に、プラズマCVDで窒化シリコン(SiN)や酸化シリコンとの積層膜を形成し、必要に応じて応力を和らげるポリイミドを重ねます。窒化シリコンは水分やナトリウムなどの可動イオンを通しにくく、配線の腐食やトランジスタの特性変動を防ぎます。そのうえで、ワイヤボンディングやバンプを付けるパッドの部分だけ膜を開口します。パッシベーション膜に割れやピンホールがあると、封止樹脂を通って入り込んだ水分で配線が腐食するため、高温高湿試験(HAST)などで信頼性を確かめます。
表面パッシベーションは、半導体の表面や界面にあるダングリングボンド(結合相手のない原子の手)を終端して、キャリアの再結合や電荷の捕獲を減らす処理です。シリコンではゲート酸化膜の界面を水素で終端する熱処理(フォーミングガスアニール)が、太陽電池では酸化アルミニウム膜や水素を含む窒化シリコン膜による表面パッシベーションが変換効率を大きく高めます。GaNのHEMTでは、表面の窒化シリコン膜が電子の捕獲による電流の低下(電流コラプス)を抑えます。