るつぼ(坩堝、ルツボ)とは、物質を高温で溶かしたり加熱したりするための耐熱容器です。一般には金属の溶解や化学分析に使われる器具を指しますが、半導体分野では主に、シリコン単結晶を引き上げるチョクラルスキー法(CZ法)で多結晶シリコンを溶かしておく石英ガラス製のるつぼを指します。
CZ法では、高純度の多結晶シリコンを石英るつぼに充填し、周囲のヒーターで融点(約1,414℃)を超えるまで加熱して融液にします。そこへ種結晶を浸し、るつぼと結晶を互いに逆方向へ回転させながらゆっくり引き上げることで、単結晶インゴットを成長させます。高温の石英は粘性が下がって変形しやすくなるため、るつぼは外側から黒鉛製のサセプタで支えられています。300mmウェハ用の結晶では、口径32インチ(約800mm)級の大型るつぼに数百kgのシリコンを溶かします。
石英がるつぼ材として選ばれるのは、高純度化が可能で、シリコン融液に対して比較的安定だからです。ただし完全に不活性ではなく、融液と接する内面は Si + SiO₂ → 2SiO の反応でゆっくり溶け出します。生じたSiOの大部分は融液表面から蒸発しますが、一部の酸素は結晶に取り込まれ、格子間酸素として残ります。CZシリコンが10〜18ppma程度の酸素を含むのはこのためで、るつぼを使わないFZ法の結晶にはほとんど酸素が含まれません。
るつぼの品質は、結晶の歩留まりを直接左右します。内面の気泡が破れたり、表面の失透(クリストバライト化)した部分が剥がれたりすると、その微粒子が成長界面に到達して結晶に転位が入り、単結晶として使えなくなります(有転位化)。このため、外側を気泡を含む不透明層、融液に触れる内側を気泡のない透明層とした2層構造とし、内層に高純度の合成石英を用いたるつぼが使われています。
るつぼは基本的に消耗品です。引き上げ後に冷却すると、残ったシリコンが凝固時に膨張することや石英の結晶化によって割れるため、原則として1回の育成ごとに交換されます。1本のるつぼからより多くの結晶を得るため、引き上げ後に原料を追加するリチャージ技術も使われています。シリコン以外では、GaAsなど化合物半導体の結晶成長にpBN(熱分解窒化ホウ素)製、SiCの昇華法(PVT法)に黒鉛製のるつぼが使われ、材料ごとに融液や蒸気と反応しにくい材質が選ばれます。