塑性変形(そせいへんけい:Plastic Deformation)とは、物体に力を加えて変形させたとき、力を取り除いても元の形に戻らずに残る変形のことです。力を取り除けば元に戻る弾性変形と対になる言葉で、加える力(応力)がある限界(降伏応力・弾性限界)を超えると塑性変形が始まります。粘土を押したときにへこみが残るのが塑性変形、ばねが元に戻るのが弾性変形のイメージです。
結晶の塑性変形は、主に転位という線状の結晶欠陥が動くことで起こります。転位が特定の結晶面(すべり面)に沿って移動すると、結晶の一部が原子の間隔の単位でずれ(すべり)、変形が永久に残ります。シリコンは室温では硬くもろく、塑性変形する前に割れますが、およそ600〜700℃以上の高温では転位が動けるようになり、塑性変形するようになります。そのため、拡散炉やRTP(急速熱処理)、エピタキシャル成長などの高温工程で、ウェハの面内の温度差による熱応力や、ウェハを支える部分にかかる自重の応力が大きいと、転位が発生・移動してスリップ(すべり)と呼ばれる欠陥が生じ、ウェハの反りも残ります。大口径のウェハほど自重と温度差が大きくなるため、ウェハの支え方や昇温・降温の速さを工夫して防ぎます。
パッケージや実装では、金属の塑性変形が信頼性を左右します。はんだ接合は、チップと基板の熱膨張の違いによって温度が変わるたびに塑性変形を繰り返し、少しずつ亀裂が進んで疲労破壊に至ります。温度サイクル試験は、この塑性ひずみの繰り返しによる寿命を評価するもので、ひずみの大きさと寿命の関係はコフィン・マンソン則で表されます。ワイヤボンディングでは、金や銅のボールを押しつぶす塑性変形を利用して電極と接合します。