BHF(Buffered Hydrofluoric Acid:バッファードフッ酸、緩衝フッ酸)とは、フッ酸(HF)にフッ化アンモニウム(NH₄F)を加えた混合液で、シリコン酸化膜(SiO₂)のウェットエッチングに使われる薬液です。BOE(Buffered Oxide Etch)とも呼ばれます。フッ化アンモニウムが緩衝剤(バッファ)として働き、液の酸性度とエッチングに効くフッ素の成分の濃度を一定に保つため、エッチングの速さが安定するのが特徴です。
フッ酸だけを薄めた希フッ酸(DHF)では、酸化膜を溶かすにつれてフッ素の成分が消費され、エッチングの速さが変わってしまいます。BHFはフッ化アンモニウムが消費された分を補うため、長時間・多数のウェハを処理しても速さがほぼ一定に保たれ、厚い酸化膜を決まった量だけ削る加工に向いています。また、液の酸性が穏やかになるため、マスクとして使うフォトレジストが剥がれにくいという利点もあります。フッ化アンモニウムとフッ酸の混合比は、6対1や10対1などの組成がよく使われ、比率と温度でエッチングの速さが変わります。
BHFは酸化膜をよく溶かす一方、シリコンはほとんど溶かさず、窒化シリコン膜もゆっくりとしか溶かさないため、下地を残して酸化膜だけを除く選択的なエッチングができます。コンタクトホールの開口、MEMSの犠牲層の除去、化合物半導体のデバイスの加工など、ドライエッチングでは下地を傷めやすい場面で使われます。低温ではフッ化アンモニウムの結晶が析出しやすいため温度を管理し、細かなパターンに液がなじむよう界面活性剤を加えた製品もあります。