パッシェンの法則とは、2枚の電極の間の気体で放電が始まる電圧(放電開始電圧、火花電圧)が、気体の圧力pと電極の間隔dの積(pd)で決まるという法則です。1889年にドイツの物理学者パッシェンが実験から見いだしました。放電開始電圧をpdに対してグラフにした曲線をパッシェン曲線と呼び、ある値で最小になるU字の形をしています。
曲線がU字になるのは、放電の始まり方が気体の分子の数と電子の進める距離のつり合いで決まるからです。pdが大きい(圧力が高い、間隔が広い)と、電子が分子にぶつかる回数が多すぎて十分に加速できず、高い電圧が必要になります。pdが小さい(真空に近い、間隔が狭い)と、ぶつかる相手の分子が少なすぎて電離が連鎖せず、やはり高い電圧が必要です。その中間に最も放電しやすい条件があり、空気では最小値が約300V強です。
半導体の製造装置では、パッシェンの法則が放電の制御と防止の両方にかかわります。プラズマを点火する条件の設計に使われる一方、静電チャックの裏面に流すヘリウムのガスの中や、高電圧がかかる部品のすき間で、意図しない放電(異常放電、アーク)が起こらないよう、圧力と間隔を最小値の付近から外して設計します。真空の中では大丈夫な電圧でも、圧力が上がる途中で放電しやすい条件を通ることがあるため注意が必要です。