ESD保護回路(静電気保護回路)とは、人の手や機械、パッケージそのものにたまった静電気が、ICの端子から一瞬で流れ込んだとき(ESD:静電気放電)に、その大きな電流を内部の回路の手前で安全な経路へ逃がし、トランジスタの薄いゲート絶縁膜などを壊さないようにする回路です。ICのすべての入出力の端子と電源の端子に作り込まれています。
静電気の放電では、数百〜数千Vの電圧で、数A以上の電流が数ns〜数百nsの短い時間に流れます。保護回路は、ふだんの動作の電圧ではまったく電流を流さず、それを超える電圧がかかった瞬間だけ素早くオンになって電流を電源やグラウンドへ逃がします。ダイオード、ゲートを接地したnMOS(GGNMOS)、サイリスタ(SCR)、電源の間に入れて電圧の急な変化を検出して動くクランプ回路などを組み合わせて作ります。
保護回路は大きく作るほど強くなりますが、端子に余分な容量が付くため、高速の信号を扱う端子では信号がなまってしまいます。また、微細化でゲート絶縁膜が薄くなるほど壊れやすくなるため、強さと速さの両立が年々難しくなっています。ICの静電気への強さは、人体モデル(HBM)や帯電デバイスモデル(CDM)の試験で評価され、ファウンドリはPDKの一部として、検証済みの保護回路を設計者に提供しています。