誘導帯電(静電誘導)とは、帯電した物体を導体に近づけたとき、触れていないのに導体の中の電荷が引き寄せられたり押しのけられたりして、近い側と遠い側に反対の電荷が偏る現象です。半導体の工場では、帯電したトレーや樹脂部品、人体の近くに置かれたデバイスやウェハが誘導帯電し、その状態で接地された物に触れたときに放電して素子を壊す(ESD破壊)原因になります。
誘導帯電では、導体全体としての電荷の合計は変わらず、偏りが生じるだけです。しかし偏った状態の導体が一瞬でも接地されると、片方の電荷だけが逃げ、その後に帯電物から離すと、導体には逃げなかった側の電荷が残って帯電します。このように、直接こすれ合わなくても帯電するのが誘導帯電の特徴で、気づきにくい帯電の原因になります。
ICの静電気破壊のモデルの1つであるCDM(デバイス帯電モデル)は、パッケージやリードフレームが帯電または誘導帯電した状態で、端子が装置の金属部などに触れて一気に放電する現象を模擬したものです。自動化が進んだ工場では、人体からの放電(HBM)よりも、搬送中のデバイスの帯電と放電(CDM)による損傷が問題になりやすくなっています。
対策の基本は、帯電しやすい絶縁物をデバイスやウェハの近くに置かないこと、作業台・床・作業者・治具を接地して電荷を逃がすこと、そしてイオナイザで空気中にイオンを供給して絶縁物の帯電を中和することです。導体は接地すれば帯電を逃がせますが、絶縁物は接地しても電荷が逃げないため、イオナイザでの中和が必要になります。
工程の中でも、純水でのウェハ洗浄やスピン乾燥、テープの剥離などで帯電が起こり、パーティクルを引き寄せたり、ゲート酸化膜を壊したりすることがあります。静電気の管理は、ANSI/ESD S20.20 や IEC 61340-5-1 といった規格に沿って行われます。