NRE費用(Non-Recurring Engineering:初期開発費)とは、新しいチップを開発するときに、量産を始める前に一度だけかかる費用のことです。設計の人件費、EDAツールの費用、IP(設計の部品)のライセンス料、検証の費用、そして製造に使うフォトマスク一式の費用などが含まれます。チップを1個作るごとにかかる製造の費用(単価)とは区別されます。
微細化が進むほど、NRE費用は急激に大きくなっています。設計と検証の規模が大きくなることに加え、最先端の世代では、露光の工程の数が増え、フォトマスクの枚数が増え、EUV用の高価なマスクも必要になるためです。最先端の世代では、マスク一式だけで数十億円規模になるとされ、設計全体を含めた開発費はさらに大きくなります。そのため、最先端のプロセスで専用のチップを作れるのは、大量に売れる製品を持つ企業に限られつつあります。
NRE費用は、どの方式でチップを作るかの判断に直結します。生産する数量が少なければ、NRE費用がほとんどかからないFPGAのほうが安く、数量が多ければ、NRE費用がかかっても1個あたりの単価が安いASICのほうが有利になります。複数の設計を1枚のウェハに相乗りさせて試作するMPW(マルチプロジェクトウェハ)や、既存のチップを組み合わせるチップレットは、NRE費用を抑えるための方法として使われています。