偏析係数とは、溶けた材料(融液)から結晶が固まるとき、不純物が固体の結晶にどれだけ取り込まれるかを表す値で、固体中の濃度を融液中の濃度で割ったもの(k=Cs/Cl)です。kが1より小さい不純物は、固まるときに結晶に入りにくく、融液の側に押し出されて残ります。この性質を偏析と呼びます。
シリコンの単結晶をCZ法で引き上げるとき、偏析係数は重要な意味を持ちます。シリコンの中でのドーパントの平衡偏析係数は、ホウ素が約0.8、リンが約0.35、ヒ素が約0.3、アンチモンが約0.023です。kが1より小さいと、引き上げが進むにつれて融液の中に不純物がたまっていくため、インゴットの後半(尾の側)ほどドーパントの濃度が高くなり、抵抗率が下がっていきます。ホウ素は偏析係数が1に近いため、比較的均一になります。
鉄や銅などの金属の不純物は偏析係数が非常に小さい(10⁻⁵〜10⁻⁴程度)ため、ほとんど結晶に入らず融液に残ります。これを利用して不純物を取り除くのが、融けた帯を何度も移動させる帯域溶融法(ゾーン精製)で、FZ法の高純度のシリコンもこの原理を使っています。偏析係数は、ウェハの抵抗率の規格に入る範囲がインゴットのどこまでかを決め、歩留まりに直結します。