アルシン(AsH3)とは、ヒ素1個に水素3個が結びついた無色の気体で、半導体にヒ素を加えてn型にするドーピングの原料や、化合物半導体のGaAs(ヒ化ガリウム)を作る原料として使われるガスです。シリコンでは、イオン注入でヒ素のイオンを作る原料や、エピタキシャル成長でヒ素を加える原料になります。GaAsでは、MOCVDでガリウムの有機化合物(トリメチルガリウム)と反応させて結晶を成長させます。
アルシンは、半導体の製造に使われるガスの中でも最も毒性の強いものの1つで、ごくわずかな量を吸い込んでも、血液の赤血球を壊す重い中毒を起こします。そのため、特殊高圧ガスとして法令に基づいて厳しく管理され、漏えいを検知するガス検知器、自動の遮断弁、排気を処理する除害装置が欠かせません。
イオン注入の原料としては、ホスフィンと同じく、吸着材に吸わせて大気圧より低い圧力で保管する減圧貯蔵のシリンダーが広く使われ、万一の漏えいの危険を減らしています。MOCVDでは、より毒性の低い液体の有機ヒ素の原料(ターシャリーブチルアルシンなど)を代わりに使う研究もありますが、純度とコストの面から、現在も多くはアルシンが使われています。