ガスキャビネット(シリンダキャビネット:Gas Cabinet)とは、半導体工場で使う毒性・可燃性・腐食性の特殊ガスのボンベ(シリンダー)を収納し、安全に製造装置へ供給するための専用の箱型設備です。シラン(SiH₄)、アルシン(AsH₃)、ホスフィン(PH₃)、塩素(Cl₂)、三フッ化窒素(NF₃)など、漏れれば人命や設備に関わるガスを扱うため、ボンベの周りを囲って常に排気し、万一の漏洩を閉じ込める構造になっています。
ガスキャビネットの中には、ボンベの圧力を下げる減圧弁、供給を止める遮断弁、配管の中を不活性ガスで置き換えるパージの機構、圧力計やフィルタなどがまとめて組み込まれています。ボンベを交換するときは、配管の中に残ったガスを窒素で置き換えてから外し、新しいボンベをつないだあとに漏れがないか確認してから供給を再開する、という手順を制御装置が自動で行います。キャビネットの中は排気ダクトにつながっていて常に負圧に保たれ、ガス検知器が漏洩を検知すると、緊急遮断弁が閉じて供給を止め、警報を出します。地震を感知して自動で遮断する機能も備えています。
ガスキャビネットから出たガスは、配管を通ってバルブマニホールドボックス(VMB)などで分岐され、各装置のガスボックスへ送られます。大量に使う窒素などのガスは大型のタンクや発生装置から供給されますが、特殊ガスはボンベ単位で扱うため、ガスキャビネットが供給の起点になります。設置や運用は、高圧ガス保安法などの法規や、SEMI S2をはじめとする安全ガイドラインに沿って行われます。