LDD(Lightly Doped Drain、低濃度ドレイン)とは、MOSFETのソース・ドレインのうち、ゲートの端に接する部分だけを低い不純物濃度にした構造のことです。ドレインの端に集中する電界を和らげ、ホットキャリアによるトランジスタの劣化を抑える目的で、1980年ごろに実用化されました。
トランジスタを微細化すると、ドレインの近くで電界が非常に強くなり、加速された高エネルギーの電子(ホットキャリア)がゲート酸化膜に飛び込んで捕獲され、しきい値電圧などの特性が時間とともに変化します。LDD構造では、ドレインとチャネルの境目に低濃度の領域を挟むことで、電位の変化をなだらかにして電界のピークを下げます。作り方は、ゲート電極を形成した後、ゲートをマスクにして低いドーズでイオン注入し、次にゲートの両側に絶縁膜の側壁(サイドウォールスペーサ)を形成し、その外側に高いドーズでソース・ドレインを注入するという順序で、自己整合的に2段の構造ができます。
LDDの領域は抵抗が高いため、トランジスタの電流を減らしてしまうという欠点があります。そこで世代が進むと、この領域は濃度を高めつつ浅く形成するソース・ドレインエクステンション(SDE)へと変わりました。現在のLDD/エクステンションは、ヒ素やボロンを低エネルギーで浅く注入し、短チャネル効果を抑えるハロー(ポケット)注入と組み合わせて形成されます。電源電圧の高いパワー用や高耐圧のMOSFETでは、電界緩和のための低濃度ドレイン構造が今も重要です。