衝突電離(インパクトイオン化)とは、強い電界で大きなエネルギーを得た電子や正孔が、結晶の原子にぶつかり、価電子帯の電子を伝導帯へたたき上げて、新しい電子と正孔の組を作る現象です。キャリアを作るには、最低でもバンドギャップより大きなエネルギーが必要で、シリコンではおよそ1.5倍程度のエネルギーで起こり始めます。
1つのキャリアが1cm進む間に何回衝突電離を起こすかを衝突電離係数と呼び、電界が強いほど急激に大きくなります。衝突電離が連鎖して電流が際限なく増えるのがアバランシェ降伏で、パワー半導体の耐圧の限界を決めます。バンドギャップの大きいSiCやGaNでは、衝突電離を起こすのに大きなエネルギーが必要なため、より強い電界まで耐えられます。
微細なMOSFETでは、ドレインの近くの強い電界で衝突電離が起こり、できた正孔が基板へ流れる基板電流になります。この基板電流は、ホットキャリアによる劣化の目安として測られます。SOIのトランジスタでは、できた正孔が浮いたボディにたまって特性が急に変わるキンク効果の原因にもなります。一方、アバランシェフォトダイオードは、衝突電離による増倍を利用して弱い光を検出します。