誘電分極とは、絶縁体(誘電体)に電界をかけると、中の正の電荷と負の電荷がわずかにずれて、物質の中に小さな電気的な偏り(双極子)が生まれる現象です。電気は流れませんが、この偏りが外からの電界を一部打ち消すため、コンデンサの間に誘電体を入れると、同じ電圧でより多くの電荷を蓄えられます。その倍率が比誘電率(k値)です。
分極には主に3つの仕組みがあります。原子の中の電子の雲が原子核に対してずれる電子分極、正のイオンと負のイオンの位置がずれるイオン分極、もともと偏りを持つ分子が電界の向きにそろう配向分極です。重い原子を含みイオン分極の大きい酸化ハフニウム(k≒20〜25)などがHigh-k膜に使われ、逆に分極しにくいフッ素や炭素を加えたり、空孔を入れたりした材料がLow-k膜になります。
分極の仕組みには、電界の変化について行ける速さの限界があり、周波数が高くなると配向分極、イオン分極の順に追いつけなくなって、比誘電率が下がります。また、分極が電界に遅れることでエネルギーの一部が熱になる誘電損失が生じます。電界を取り去っても分極が残る材料は強誘電体と呼ばれ、FeRAMや強誘電体トランジスタに使われます。