絶縁膜とは、電気を通さない性質を持つ薄い膜のことで、半導体では配線どうしやトランジスタの電極の間を電気的に分離するために使われます。英語ではdielectric(誘電体)と呼ぶことが多く、誘電体膜とも言います。主な材料は、酸化シリコン(SiO₂)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)のほか、酸化ハフニウム(HfO₂)などの高誘電率(high-k)材料や、炭素を含むSiOCなどの低誘電率(low-k)材料です。
絶縁膜は用途によって求められる性質が大きく異なります。ゲート絶縁膜は、薄くても電流を漏らさず、ゲートの電界をチャネルによく伝える必要があるため、誘電率が高いほど有利で、先端品ではhigh-k膜が使われます。反対に、配線の間を埋める層間絶縁膜は、配線間の寄生容量を減らして信号の遅延(RC遅延)と消費電力を抑えるため、誘電率が低いほど有利です。SiO₂の比誘電率約3.9に対し、low-k膜では2.5〜3.0程度まで下げ、さらに空隙を使うエアギャップも実用化されています。このほか、素子分離の埋め込み膜(STI)、エッチングを止めるストッパー膜、水分や可動イオンを遮る保護膜(パッシベーション膜)、DRAMのキャパシタの容量絶縁膜などがあります。
絶縁膜は、熱酸化、CVD(プラズマCVD・LPCVD・HDP-CVD)、ALD、塗布(SOG・ポリイミド)などで形成します。評価では、どこまでの電界に耐えられるか(絶縁破壊電界、SiO₂で約10MV/cm)、リーク電流、誘電率、膜の応力、長時間電圧をかけたときの絶縁破壊寿命(TDDB)などを確認します。配線の微細化とともに絶縁膜は薄く、柔らかく(low-k)なり、CMPや実装時の機械的な強度の確保も課題になっています。