キャリアとは、半導体の中で電荷を運んで電流を流す粒子のことで、正式には電荷キャリアと呼びます。半導体のキャリアには、負の電荷を持つ電子と、電子が抜けた跡が正の電荷を持つ粒子のように振る舞う正孔(ホール)の2種類があります。n型半導体では電子が多数キャリア、正孔が少数キャリアとなり、p型半導体ではその逆になります。
キャリアの数(キャリア濃度)は、ドーピングと温度で決まります。シリコンの真性キャリア密度は室温で約1×10¹⁰cm⁻³とわずかで、ドーピングによってこれを10¹⁵〜10²⁰cm⁻³程度まで増やします。キャリアの動きやすさは移動度で表し、シリコンでは電子(約1,400cm²/V·s)が正孔(約450cm²/V·s)の約3倍動きやすいため、同じ大きさならnMOSのほうがpMOSより大きな電流を流せます。導電率はσ=q(nμₙ+pμₚ)で表され、キャリア濃度と移動度の積で決まります。キャリアの流れには、電界に引かれるドリフトと濃度差で広がる拡散があり、電子と正孔が出会って消える再結合や、欠陥の準位への捕獲(キャリアトラップ)も素子の特性を左右します。
MOSFETでは、ゲート電圧でチャネルにキャリアを集めて電流をオン・オフします。pn接合ダイオードや太陽電池、LEDでは、少数キャリアの注入と再結合が動作の中心です。キャリアが再結合するまでの平均時間をライフタイムと呼び、ウェハの結晶品質や金属汚染の評価にも使われます。なお、半導体製造の現場ではウェハを入れて運ぶ容器(FOUPやカセット)もキャリアと呼ぶため、文脈で区別する必要があります。