グリッチ(Glitch)とは、デジタル回路の信号に一瞬だけ現れる、意図しない短いパルス(ひげ状の波形)のことです。英語で「ちょっとした不具合」を意味し、ゲームやソフトウェアで想定外の動きをするバグを指す使い方もありますが、半導体・電子回路では主にこの短いパルスを指します。グリッチが記憶素子(フリップフロップ)のクロックやリセットに入ると、回路が誤動作する原因になります。
グリッチの主な原因は、信号の通り道ごとに遅延時間が違うことです。たとえば複数の入力が同時に変わるとき、それぞれの信号がゲートに届くタイミングがわずかにずれると、論理的には変化しないはずの出力が一瞬だけ反転することがあります(ハザード)。組み合わせ回路の出力にグリッチが出ても、次のクロックの時点で値が落ち着いていれば同期回路では問題になりませんが、その信号をクロックや非同期リセットとして使うと、短いパルスでもフリップフロップが反応して誤動作します。クロックを止める・切り替える回路では、グリッチのない(グリッチフリーの)クロック切り替え回路やクロックゲーティング用のセルを使います。
グリッチは消費電力にも影響します。CMOS回路では信号が反転するたびに電力を消費するため、意味のないグリッチによる反転が多い回路では、無駄な電力が増えます。演算回路のように段数の多い組み合わせ回路で特に目立ち、遅延をそろえる設計で減らします。このほか、電源電圧が一瞬だけ下がる電源グリッチや、意図的に電源やクロックを乱して暗号チップを誤動作させるグリッチ攻撃(フォールト攻撃)という使い方もあり、セキュリティチップでは検出回路を備えて対策します。