マルチプレクサ(Multiplexer、MUX)とは、複数の入力信号の中から1つを選んで出力する回路のことです。選択器やデータセレクタとも呼ばれます。どの入力を選ぶかは選択信号(セレクト信号)で指定し、n本の選択信号で2のn乗本の入力から1本を選べます。反対に、1本の入力を複数の出力のどれかに振り分ける回路はデマルチプレクサ(DEMUX)と呼びます。
デジタル回路では、マルチプレクサはANDゲートとORゲートの組み合わせ、あるいはトランスミッションゲートで作られ、CPUの中で演算に使うデータを切り替えるデータパスや、複数の回路が共有するバスの切り替えに欠かせません。FPGAの基本素子であるルックアップテーブル(LUT)も、設定値を記憶したメモリをマルチプレクサの木で選ぶ構造になっています。テスト容易化設計のスキャンテストでは、フリップフロップの入力の前にマルチプレクサを置き、通常動作とテスト用のシフト動作を切り替えるスキャンフリップフロップが使われます。
アナログのマルチプレクサは、複数のセンサの信号などを1つのADコンバータに順番に切り替えて入力する用途で使われ、オン抵抗や切り替え時の雑音、信号の漏れ(クロストーク)が性能の指標になります。通信の分野では、複数の信号を時間で区切って1本の伝送路にまとめる時分割多重もマルチプレクスと呼び、並列のデータを高速の直列信号にまとめるSerDesの送信回路でも、マルチプレクサが中心的な役割を果たします。