キャプチャレンジ(Capture Range)とは、PLL(位相同期回路)などの同期回路が、同期していない状態から入力信号に引き込んで同期(ロック)を確立できる入力周波数の範囲のことです。引き込み範囲とも呼ばれます。半導体の分野では、SoCのクロック生成回路や高速シリアル通信の受信回路(CDR)を設計・評価するときに使われる用語です。
よく似た用語にロックレンジ(保持範囲)があります。ロックレンジは、いったん同期した状態から入力周波数を少しずつ動かしたときに、同期を保ち続けられる範囲です。一般にキャプチャレンジはロックレンジより狭く、「同期を保てる範囲」の中に「新たに同期を確立できる範囲」が含まれる関係になります。
キャプチャレンジの広さは、位相比較器の方式とループフィルタの帯域で決まります。単純な位相比較器(ミキサやXOR型)では、引き込める範囲がおおむねループ帯域の程度に限られます。これに対して、周波数の差も検出できる位相周波数比較器(PFD)を使うと、VCO(電圧制御発振器)が出せる周波数範囲の全体で引き込めるようになるため、クロック生成用のPLLではPFDが広く使われています。
高速シリアル通信の受信側で、受信データからクロックを再生するCDR(Clock Data Recovery)では、データに合わせて位相を追う回路のキャプチャレンジが狭いことが多く、まず基準クロックや周波数検出回路でVCOの周波数を目標付近まで合わせてから、位相の追従に切り替える構成がとられます。キャプチャレンジが不足すると、電源投入時や温度変化時に同期が確立できない不具合につながります。
なお、露光装置のアライメントなど、目標を検出して位置を合わせる制御でも、初期のずれがどの範囲内なら正しく目標を捉えられるかを指して「キャプチャレンジ」と呼ぶことがあります。いずれも「自動で引き込める初期状態の範囲」という意味で共通しています。