プラズマシースとは、プラズマが壁や電極、ウェハなどの物体と接する境界にできる、電子が少なく正イオンが多い薄い層のことです。単にシースとも呼びます。プラズマの本体はほぼ電気的に中性ですが、シースの中には強い電界があり、プラズマから物体に向かって大きな電位差がつきます。プラズマエッチングでイオンをウェハに垂直に打ち込めるのは、このシースの電界があるためです。
シースができるのは、電子がイオンよりはるかに軽く動きやすいためです。物体の表面にはまず電子が多く飛び込んでマイナスに帯電し、その電位が電子を押し返してイオンを引き寄せるようになったところで、電子とイオンの流れが釣り合います。イオンはシースの電界で加速され、表面にほぼ垂直に入射します。シースの厚さは電位差やプラズマの密度で変わり、プラズマ中の電荷の遮へい距離(デバイ長)の数倍から、高周波のバイアスをかけたウェハ上では数mm程度になります。高周波バイアスの電力と周波数を変えると、シースの電位差が変わり、ウェハに入射するイオンのエネルギーとその分布を制御できます。
シースの状態はエッチングの形状を大きく左右します。ウェハの端ではシースの境界が曲がり、イオンが斜めに入射して穴や溝が傾くため、ウェハの周りにフォーカスリングを置いてシースを平らに保ちます。フォーカスリングが消耗して高さが変わるとシースが曲がるため、交換や高さの調整が必要です。また、高アスペクト比の穴の奥では、垂直に入るイオンと斜めに入る電子の到達しやすさの違いから底と側壁が帯電し(チャージアップ)、形状の異常やノッチングの原因になります。シースの理解は、エッチングやプラズマCVDの条件設計の基礎です。