相互コンダクタンス(gm)とは、トランジスタの入力の電圧のわずかな変化に対して、出力の電流がどれだけ変化するかを表す値です。MOSトランジスタではゲートの電圧の変化に対するドレイン電流の変化(gm=ΔId/ΔVgs)、バイポーラトランジスタではベースの電圧に対するコレクタ電流の変化で表し、単位はS(ジーメンス)です。
相互コンダクタンスは、トランジスタが信号をどれだけ増幅できるかを決める最も基本の値です。増幅回路の電圧の増幅率はおおよそ gm と負荷の抵抗の積で決まり、トランジスタが速く動ける上限の周波数(遮断周波数 fT)も gm をゲートの容量で割った値に比例します。MOSトランジスタでは、移動度が高いほど、ゲート絶縁膜が薄いほど、チャネルの幅が広く長さが短いほど gm が大きくなります。
同じ電流を流したときの gm は、バイポーラトランジスタのほうが大きくなります。バイポーラでは gm=Ic/VT(室温でVTは約26mV)なのに対し、MOSトランジスタの飽和領域では gm=2Id/(Vgs−Vth) で、ゲートの電圧にかける余裕(Vgs−Vth)が通常は数百mVあるためです。アナログ回路の設計では、電流あたりの gm(gm/Id)を指標にして、消費電力と性能のバランスを決める方法がよく使われます。