キュータイム(Q-Time、Queue Time)とは、ある工程が終わってから次の工程を始めるまでの待機時間のことです。半導体の製造現場では特に、「この時間内に次工程へ着工しなければならない」という待機時間の上限(Q-Time制限、Q-Time制約)を指して使われます。上限を超えたウェハは再洗浄などのやり直し(リワーク)に回されるか、やり直しがきかない場合はスクラップになります。
待機時間に上限が必要なのは、処理直後のウェハ表面が時間とともに変化するためです。DHF洗浄で自然酸化膜を除去したシリコン表面は大気中で再び酸化が進み、CMP後の銅配線の表面は酸化や腐食が進みます。Low-k膜は吸湿し、化学増幅型レジストは露光から露光後ベーク(PEB)までの間に環境中のアミンなどの影響を受けて寸法が変わります。いずれも次工程の界面品質や寸法に直結するため、変化が許容範囲に収まる時間内で次工程を始める必要があります。
Q-Timeが設定される代表的な区間には、ゲート酸化やエピタキシャル成長の前洗浄から炉・成膜装置への投入まで、コンタクトホールの開口と前処理から金属成膜まで、銅CMPからキャップ膜の成膜までなどがあります。上限値は、表面が変化する速さと次工程の感度から工程ごとに実験で決められ、区間によって数時間程度のものもあれば、より短く管理されるものもあります。
Q-Timeは生産管理上の大きな制約でもあります。前工程を終えた時点で後工程の装置が空いていなければ待ち時間が延び、違反につながるためです。そこでMES(製造実行システム)は、前工程を終えた時刻を起点にタイマーを管理し、期限が近いロットを優先して払い出します。さらに、後工程の装置を確保できる見込みがない限り前工程を着工させない制御も行われます。Q-Timeが複数の工程をまたいで連なる区間ではこの判断が難しくなり、装置の稼働率と違反リスクのトレードオフになります。
待機中の変化そのものを遅らせる対策も取られます。ウェハをN₂パージしたFOUPやストッカーで保管したり、EFEM内をN₂雰囲気にしたりして酸素や水分との接触を減らせば、許容できる待機時間を延ばせます。より根本的には、前処理と成膜を真空を破らずに連続して行う装置構成にすれば、工程間でウェハが大気に曝されず、その区間のQ-Time管理自体が不要になります。