ネオンガス(Ne)とは、空気中に約0.0018%含まれる希ガスで、半導体製造ではArF・KrFエキシマレーザーの発振用ガスとして使われます。エキシマレーザーのガスはアルゴンやクリプトン、フッ素などを少量含み、残りの大部分をネオンが占める混合ガスで、ネオンは放電を安定させるバッファガスの役割を果たします。DUV露光装置の光源を動かし続けるための消耗品であり、世界の高純度ネオンの需要の大きな部分を半導体産業が占めています。
ネオンは空気を液化して酸素や窒素を分離する空気分離装置の副産物として得られます。大量の酸素を使う製鉄所に付属する大型の空気分離装置で粗ネオンが回収され、それを精製して高純度品にするのが一般的です。旧ソ連時代の製鉄産業の名残から、ロシアとウクライナが粗ネオンの回収と精製の主要な拠点となり、2022年以前はウクライナの企業が半導体グレードのネオンの約半分を供給していたとされます。
この供給構造がリスクとして顕在化したのが、2014年のクリミア危機と2022年のロシアによるウクライナ侵攻です。2022年にはウクライナ南部の精製企業が操業を停止し、ネオン価格が急騰しました。半導体メーカーは在庫と調達先の多様化で当面の生産を維持しましたが、特定地域に集中した希ガスの供給が半導体生産全体のボトルネックになりうることが明らかになりました。
対策として、レーザーメーカーのギガフォトンやCymer(ASML傘下)はネオンの消費量を大幅に減らすガス制御技術や、使用済みガスを回収・精製して再利用するリサイクル装置を提供しています。また中国・米国・韓国などで空気分離装置からのネオン回収能力の増強が進みました。なお、EUV露光装置はレーザー励起プラズマ光源を使うためネオンを必要としませんが、DUV露光は今後も多くの工程で使われるため、ネオンの安定調達は引き続き重要です。